夢の言葉と失われた追想【続編④】

☆リサーナ☆

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第1章(3)アカリside

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「……お風呂」

「!……え?」

「ごめん、焦り過ぎたな。
先にお風呂入ってきていいよ」

肌着姿の私にヴァロンは自分の上着を羽織らせてくれて、優しく微笑むと、慣れた手付きで着物を畳んでくれる。


「う、うんっ。ありが、とう……」

そのヴァロンの姿にキュンッとしながらも、高まっていた熱がお預けをくらって何だか寂しい気持ちになる。


ホント、エッチだなぁ……私。

真っ赤な顔を押さえながら、私はタオルと着替えを持って部屋に付いているお風呂に向かった。

……
…………。


「!……わぁ~っ!」

身に付けている物を全て脱いで、扉を開けてビックリ。広くて、外の景色が見渡せる綺麗なお風呂。
これが雑誌で見た露天風呂、というやつだ!と感動する。

今の時期は少し寒いけど、きっと夜は星が綺麗に見えるんだろうな。と思いつつ身体を流し、広い浴槽にドキドキしながら浸かってみる。


「ん~、気持ちいい~」

自宅のお風呂も充分広くて綺麗だけど、やっぱりまた一味違う。
お風呂というより小さいプールみたいで泳げちゃいそうだし、大人数で入っても楽しめそうだ。

と、言っても生まれてこの方、母親とヒナタ以外と一緒にお風呂なんて入った記憶はないし。自分の裸を晒すなんて恥ずかしくて苦手な私に、きっとそんな機会はないだろうと思っていた。

……のに。

景色を眺めながら鼻歌を歌っていると、背後からガラッと扉が開く音がして……。


「お、すげぇ~。
さすがこの辺りで1番って言われてる露天風呂だな」

と、感心するヴァロンの声が聞こえた。


……。
……え?

私は、まさか……。と思いつつも、湯船の中で固まった。


「今まで任務で色んな所に泊まったけど、ここが一番良いな~。
ま、アカリと一緒だから当たり前か」

背後から聴こえるヴァロンの笑い声と、おそらく身体を流しているお湯の音が……。私の耳に響く。
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