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第1章(2)アカリside
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【お寺】
ヴァロンと泊まりで出掛けるなんて、結婚して以来初めての事だった。
二人で電車に乗って、着いた場所は有名なお寺がある観光地。
今は1月だから桜は咲いていないけど、春は桜の木が満開になり、秋には鮮やかな紅葉が溢れて人気のある観光地だ。
「時期が悪くてごめんな?寒くないか?」
そう言ってヴァロンは繋いでいた私の手を、自分のコートのポケットに入れて暖めてくれる。
寒い訳ない。
ヴァロンが一緒に居てくれるだけで、私はいつもポカポカだった。
「全然平気!
ここ、雑誌で見て一度来てみたかったの!」
確かに桜や紅葉の季節じゃないのは残念だけど、出店や催し物で辺りは賑わっていて充分楽しい。
何よりも、ヴァロンと一緒にデートならば場所なんてどこでも私は幸せだった。
「本当はさ、アルバート様の本邸に連れてってギルとサヤさんの墓参りさせてやりたかったんだけど……。ごめんな?」
一緒に歩きながら、ヴァロンが空を見上げて言った。
「ギル達に見せてやりたかったな。アカリの綺麗な晴れ着姿」
アルバート様の本邸の敷地内にある、私のお父さんとお母さんのお墓。
でもその場所は別の大陸にあるから、明日の夜にはまた仕事が詰まっているヴァロンの日程ではとても行けなくて……。
彼は申し訳なさそうな表情を浮かべている。
「……充分だよ。
私を、こんなに幸せにしてくれてるんだもん!」
繋いだ手をキュッと握って私は言った。
元々は、別々のお墓に眠っていたお父さんとお母さんが一緒のお墓に入れる事になったのは、ヴァロンがいたから。
ヴァロンが私とアルバート様をちゃんと、お祖父ちゃんと孫の関係にしてくれたからだ。
ヴァロンと泊まりで出掛けるなんて、結婚して以来初めての事だった。
二人で電車に乗って、着いた場所は有名なお寺がある観光地。
今は1月だから桜は咲いていないけど、春は桜の木が満開になり、秋には鮮やかな紅葉が溢れて人気のある観光地だ。
「時期が悪くてごめんな?寒くないか?」
そう言ってヴァロンは繋いでいた私の手を、自分のコートのポケットに入れて暖めてくれる。
寒い訳ない。
ヴァロンが一緒に居てくれるだけで、私はいつもポカポカだった。
「全然平気!
ここ、雑誌で見て一度来てみたかったの!」
確かに桜や紅葉の季節じゃないのは残念だけど、出店や催し物で辺りは賑わっていて充分楽しい。
何よりも、ヴァロンと一緒にデートならば場所なんてどこでも私は幸せだった。
「本当はさ、アルバート様の本邸に連れてってギルとサヤさんの墓参りさせてやりたかったんだけど……。ごめんな?」
一緒に歩きながら、ヴァロンが空を見上げて言った。
「ギル達に見せてやりたかったな。アカリの綺麗な晴れ着姿」
アルバート様の本邸の敷地内にある、私のお父さんとお母さんのお墓。
でもその場所は別の大陸にあるから、明日の夜にはまた仕事が詰まっているヴァロンの日程ではとても行けなくて……。
彼は申し訳なさそうな表情を浮かべている。
「……充分だよ。
私を、こんなに幸せにしてくれてるんだもん!」
繋いだ手をキュッと握って私は言った。
元々は、別々のお墓に眠っていたお父さんとお母さんが一緒のお墓に入れる事になったのは、ヴァロンがいたから。
ヴァロンが私とアルバート様をちゃんと、お祖父ちゃんと孫の関係にしてくれたからだ。
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