上 下
24 / 214
第1章(2)アカリside

2-1

しおりを挟む
【港街/自宅】

「わぁ~!」

「アカリさん!可愛いっ!」

「すごい!和服、似合いますね!」

別室で着替えてきた私を、ヒナタを抱いたユイちゃんと、その両脇に居るレナとレイがニコニコしながら見つめる。

年が明けて、1月の半ば。
今日はなんと、人生初めての着物姿。


「あ、ありがとう」

すでに既婚で子持ちだから、私は振袖じゃなくて色留袖。
でも、紫色に近い薄いピンク色の生地はとても可愛らしくて、プレゼントされた日から着る日を心待ちにしていた。


「可愛くて、似合ってるなんて当然だろ?
俺がアカリの為に選んだんだから」

みんなに褒めて貰えて嬉し恥ずかしい気持ちでいっぱいの私の背後から、ヴァロンの自信満々の声が聞こえる。

そう、この着物をプレゼントしてくれたのはヴァロン。


「っ~~……」

ヴァロンの言葉に、彼を見たみんなが一瞬固まる。
黒髪に黒い瞳に眼鏡を掛けて変装し、ワイシャツの袖のボタンを留めながら穏やかに微笑んで私の傍に歩んで来る、スーツ姿のヴァロン。

可愛くて、似合ってるのは彼の方。
多分、ここにいるみんながそう思った。


「それにしても、ヴァロン様はすごいですよね~。着物の着付けや、ヘアメイクまで出来ちゃうんですから」

私の姿をまじまじと見つめながら、レナは尊敬の言葉をヴァロンに掛ける。

そうなんだよね。
私に着付けをしてくれて、ここまで可愛くしてくれたのはなんとヴァロン。
そんじゃそこらの美容師さんに負けない腕前で、本当に何でも出来てしまうんだ。と改めて感心してしまう。


「まあな。和服で任務の場合もあるし、これくらい当たり前だよ。
……さてと。じゃあ、ユイ、レナ、レイ。明日までヒナと留守番よろしくな」

ヴァロンが声を掛けると、三人は「はい!」と声を揃えて返事をする。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨ 〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

君に愛は囁けない

しーしび
恋愛
姉が亡くなり、かつて姉の婚約者だったジルベールと婚約したセシル。 彼は社交界で引く手数多の美しい青年で、令嬢たちはこぞって彼に夢中。 愛らしいと噂の公爵令嬢だって彼への好意を隠そうとはしない。 けれど、彼はセシルに愛を囁く事はない。 セシルも彼に愛を囁けない。 だから、セシルは決めた。 ***** ※ゆるゆる設定 ※誤字脱字を何故か見つけられない病なので、ご容赦ください。努力はします。 ※日本語の勘違いもよくあります。方言もよく分かっていない田舎っぺです。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

処理中です...