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第1章(1)ミネアside
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しおりを挟む「用件は以上です。失礼致しますわ」
これ以上話す事はない、と微笑みながら一礼し、退室しようとした私にアラン様が言う。
「……お父上様が御息女の我が儘に左右される会社の社長とは、驚きですね」
鼻で笑った、まるで人を見下した様な態度。
「そんな方が社長とは、世も末だ。
それに、こんな大事な話をいくら娘が可愛いからと言って任せるとは……。親馬鹿にも程があります」
その通り。
世間一般的に見れば、娘可愛さに契約を結んだり破棄したりする親馬鹿な父親。
これが世間に知れたら、叩かれるのはまず父だわ。
でもね……。
「ハッキリ言って無礼です。
社長自らが出向いてくるのが礼儀と言うものでしょう。
この話は……」
「無礼は、そちらの方です」
私はアラン様の言葉を遮り、見つめた。
さっきとは違う。
笑顔ではなく、私の”本当の顔”で。
「アラン様。
貴方様とは何度かお会いしておりますのに……。
未だにわたくしの正体に気付いてませんの?」
アラン様に詰め寄り、じっと見上げる。
私の言葉の意味にまだ気付いていない彼は顔をしかめていた。
やれやれ、と私は溜め息を吐くと自らの正体を告げる。
「マオ様は、たった一度お会いしただけで気付きましたわ。
父の会社の跡取りが……。次期社長が、わたくしだという事に」
「!?……」
私の告白に、さすがにいつも余裕を見せているアラン様でも驚いた表情を見せた。
……そう。
三人の兄を持つ末の子供であり、女の私が、父の会社の跡取り。
社長令嬢という仮面を被った、次期社長。
それが私の本当の姿。
それを、マオ様は見破り……。
あの夜、私の元を訪れた。
……
…………。
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