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第7章(4)シュウside
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【夢の配達人隠れ家の広場】
ほとんど視力のない目では不自由が多かったが、それでも幼い頃から家のように過ごしてきたこの隠れ家内だけは迷う事なく歩ける。
特に、この想い出の広場には辿り着けた。
ヴァロンと組手や、様々な修行を切磋琢磨した場所。
そして、リディアと会う場所もここが多かった。
任務から帰ってきた彼女を「おかえりなさい」って迎えると、いつも最高の笑顔を返してくれる。
大人っぽいクールな印象のリディアが、まるで少女のように無邪気に飛び付いてきてくれたんだ。
「アンタのそれ、いいね!」って。
ただの、普通の出迎えを本当に嬉しそうにしてくれた。
だから私は、”ご苦労様でした”、”お疲れ様でした”の前に必ず「おかえりなさい」と言って、任務から戻った夢の配達人や調査員を迎えるようにしている。
この隠れ家を、配達人達にも我が家のように思って欲しかったから……。
それが、マスターの道を選んだ時に1番に心掛けようとしていた事だった。
色んな事を思い出しながら、私は昔のように広場の地面に直接腰を降ろした。
ヒンヤリとしたコンクリートの感触は、ヴァロンと組手をした後に大の字で寝転ぶと気持ち良かった冷たさのまま。
その変わらない地面に触れて、また甦ってくる想い出。
思えば、よくリディアにはからかわれた。
ヴァロンとリディアのやり取りに私が鋭く指摘したり、怒ったりすると「さすが、次期マスター殿!」とか「かしこまりました、次期マスター殿!」って……。
二人は真面目と不真面目のバランスが丁度良いのに対し、真面目しかなかった私は常にツッコミ役。
それを次第に”考えが堅い”と、短所にしか取れなくなった時期もあったが……。
そんな時に「アンタの真面目さは、マスターになった時に絶対役に立つ」と、励ましてくれたのもリディアだった。
ほとんど視力のない目では不自由が多かったが、それでも幼い頃から家のように過ごしてきたこの隠れ家内だけは迷う事なく歩ける。
特に、この想い出の広場には辿り着けた。
ヴァロンと組手や、様々な修行を切磋琢磨した場所。
そして、リディアと会う場所もここが多かった。
任務から帰ってきた彼女を「おかえりなさい」って迎えると、いつも最高の笑顔を返してくれる。
大人っぽいクールな印象のリディアが、まるで少女のように無邪気に飛び付いてきてくれたんだ。
「アンタのそれ、いいね!」って。
ただの、普通の出迎えを本当に嬉しそうにしてくれた。
だから私は、”ご苦労様でした”、”お疲れ様でした”の前に必ず「おかえりなさい」と言って、任務から戻った夢の配達人や調査員を迎えるようにしている。
この隠れ家を、配達人達にも我が家のように思って欲しかったから……。
それが、マスターの道を選んだ時に1番に心掛けようとしていた事だった。
色んな事を思い出しながら、私は昔のように広場の地面に直接腰を降ろした。
ヒンヤリとしたコンクリートの感触は、ヴァロンと組手をした後に大の字で寝転ぶと気持ち良かった冷たさのまま。
その変わらない地面に触れて、また甦ってくる想い出。
思えば、よくリディアにはからかわれた。
ヴァロンとリディアのやり取りに私が鋭く指摘したり、怒ったりすると「さすが、次期マスター殿!」とか「かしこまりました、次期マスター殿!」って……。
二人は真面目と不真面目のバランスが丁度良いのに対し、真面目しかなかった私は常にツッコミ役。
それを次第に”考えが堅い”と、短所にしか取れなくなった時期もあったが……。
そんな時に「アンタの真面目さは、マスターになった時に絶対役に立つ」と、励ましてくれたのもリディアだった。
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