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第5章(4)アルバートside

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【6月15日/アルバート別荘の自室】

「アルバート様!
何をなさっているのですかっ?大人しく横になっていて下さい!」

見付かってしまったか。

寝具のまま起き上がり仕事机で資料を広げていた私に、様子を見に来た使用人長のローザが怒りの声を上げる。

とっさに言い訳を考えたが長い付き合いの彼女には通用するはずもなく、手に持っていた資料は取り上げられ、席を強引に立たされると背中を押さながらベッドへと戻された。


「いやね、あれはその……」

「療養の為にこちらに来られたのでしょう?
ならば、ここにいる間はごゆっくりなさって下さいませ」

横になった私にそう言いながら、掛け布団を被せてくれるローザ。
口調は厳しくたんたんとしているが、ちょっとした仕草や私に向けてくれる眼差しには優しさを感じ、観念して大人しくする事を決めた。


療養。
そう、私が別荘に来たのは数日前に体調を崩し、職場で倒れてしまったからだ。

幸い大きな病などではなく、ただの疲労。
少し休めば大丈夫だと医師からも言われた。


だが、それと同時に限界も告げられる。
いくら若い頃からずっと続けてきた慣れた仕事とは言え、誰でも老いには勝てないもの。
年々、確実にキツくなってきていた。

同世代には皆息子や跡継ぎ候補がおり、世代交代への準備を進めながら徐々に身を引いて行くのが当たり前の年齢。


しかし、私にはそれがない。

一人息子のギルバートはすでに他界。
その娘であり、孫のアカリを嫁に出す事で跡継ぎを得ようと考えた事もあったが……。


「アカリ様に、ご連絡しなくて本当によろしいのですか?」

「いいんだよ、私はたいした事ない。
変に伝えれば心配させるだけだろう?
……それに。
あの子の方が、これからまた苦しい想いをするかも知れん」

ローザの言葉に首を横に振り、ベッドの横にある棚から雑誌を手に取る。
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