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第4章(2)アカリside

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【港街/広場】

ヴァロンだと思った。

でも。目の前の男性はなかなか言葉が出てこない私に首を傾げていて、ふと自分の眼鏡が足元に落ちている事に気が付くと、拾って状態を確認していた。

そのそっけない仕草や表情を見ていると、自分の直感がだんだんと間違いだったのかと心が揺れる。


「ま~ま……」

「!……あ、ヒカル。っ……。
お、お兄さんに”ごめんなさい”……して?」

半信半疑で動揺していた。
が、”もし人違いならばとりあえず謝らなければ”という気持ちが働いた私は、申し訳なさそうに歩み寄ってきたヒカルに謝るよう促す。


「にーちゃ、ごめちゃい……」

「っ……本当に、ごめんなさい。
眼鏡、弁償しますからっ……」

ヒカルと一緒に頭を下げて壊れた眼鏡を受け取ろうと手を伸ばすと、男性は眼鏡を持つ手を引っ込めて首を横に振った。
揺れる少し長い前髪の隙間から覗く瞳が、優しい光を放っていて……。また、私の胸をドキンッと弾ませる。


「いえ、大丈夫です。
僕もボーッとしていたので、お互い様ですよ。
……ちゃんと謝れて、偉いね?」

男性はヒカルの目線に合わせて屈むと、大きな手で頭をポンポンと優しく撫でた。


その様子に、私は分からなくなる。
私達に、気付いていないの?
そう心の中で問いかける。

何か事情があって、他人のフリをしている?
ヴァロンが夢の配達人だった頃なら充分にあり得たが、今の状況や境遇でまでそんな事を貫くほど薄情な心の持ち主ではない事くらい分かっている。


ならば、一体なぜ?
この男性の傍にいて高鳴る私の鼓動は、間違いなのだろうか?

そう思えば、ヴァロンと目の前の男性はとても似ているが違うところもあった。
その場にいるだけで変装していても存在感が溢れ出るようだった以前の彼に比べて、目の前の男性はどこか頼りなさ気というかおっとりしているというか……。悪く言えば、ボーッとしている人に等しい。
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