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第3章(3)アカリside
3-3
しおりを挟む「っ……まま?
まま、ないてるの?」
初めて見る私の涙に、戸惑った様子のヒカル。
まだ幼いこの子達に理解してもらうのは難しい事かも知れない。
困らせてしまうと分かりながら、涙が止まらない私が暫く抱き締めたままでいると……。
腕の中のヒナタが呟く。
「……ヒナ、まてるよ。
ママといっしょに、まてる」
「えっ?……」
その言葉に驚いて、ゆっくり身体を離して見つめと……。
そこには、今までとは違う。何だか少しお姉さんになった表情のヒナタが微笑んでいた。
私と目が合って、ちょっと照れ臭そうな娘は、隣の弟の手を取ってお姉ちゃん口調で言う。
「ヒカルもいっしょにがんばるんだよ。
おとこのこなんだから、しっかり!ね?」
”しっかり!”
そう言われて、始めはキョトンとしていたヒカルも次第に表情が変わっていく。
「っ……うん!」
決意をしたように二人で頷いて、私を見て、子供達が微笑った。
その眩しい笑顔に、今まで孤独に包まれていた自分が解かされる。
ああ、そっか。
私は独りじゃなかった。
独りで頑張り続ける必要なんてなかった。
”一緒に、頑張る”
そんな当たり前で大切な事を、私は娘に改めて教えてもらって、ようやく本当の家族になれた気がした。
「っ……ありがとう!ヒナタ、ヒカル」
嬉しくて、暖かくて、再び子供達を抱き締めた私には幸せの笑みが溢れていた。
久々の、心からの笑顔。
ギューッと強く抱き合って、微笑み合って……。
その後、アルバムをめくりながら子供達にたくさんヴァロンの事を話した。
興味津々に私に色々質問しながら、自分達の父親の存在を喜ぶ二人。
その姿を見て表情を緩ませていると……。
「みゃ~」
「!……リディア?」
鳴き声にハッとして目を向けると、いつの間にか傍に来ていた猫リディア。
私がさらわれたあの事件以来。人を警戒するようになってしまって、滅多に物陰から出てこようとしなかった猫リディアがじっと私達を見つめていた。
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