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第1章(4)レナside

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アカリさんが誘拐され、その際にヴァロン様との絆に亀裂が入ってしまったシュウ様は……。
その心の傷のせいか病が悪化して、今ではもうほとんどの視力を失っていた。

慣れた場所を歩いたり、大体の生活の事はご自分で出来るのだが、こういった報告書などを1人で読む事は困難。
ホノカさんは医療施設の医師を辞め、今ではシュウ様の秘書としてマスター業を補佐している。


大変な状況の中。
前マスターのギャラン様は「動けるうちに、やりたい事がある」と、一年前にその座をシュウ様に託し旅に出てしまったし……。

伝説の夢の配達人ヴァロン様がいなくなったあの日から、それを境に夢の配達人の世界も変わってしまったのだ。

またシャルマ様やアラン様が何か企ててくるかも知れないと、事件後暫くはアカリさんの警護に当たっていたが……。
”ヴァロン様と離縁した人物に、必要以上に関わる事ない”とギャラン様が命をだし、彼女とも徐々に疎遠に。


初めはその指示を”冷たい”と感じたが、私達がいつまでも関与していてはアカリさんもなかなか前に進めないのではないか……。という、ギャラン様の優しさだったのだろうと、今は思う。

噂で無事に2人目のお子である男の子を出産したと聞いたが、同じ港街に住みながら今ではアカリさんと顔を合わせる事はない。

仲良く微笑み合っていた明るい笑顔も、アカリさんの手料理の味も……。
今でも昨日の事のように、思い出せるのに。


ピーッ!ピーッ!ピーッ!

思い出に浸ってついボーッしていた私の耳に、通信機の音が入ってきてハッと我に返った。
次の任務の時間を知らせるアラーム。

現実に、引き戻される。


「あ、すみません。
次の任務がありますので、これで失礼します!」

「気を付けて。
……レナ、無理はしないで下さいね?」

軽く頭を下げてその場を後にしようとドアノブに手を掛けた私の背に、シュウ様の優しい声が聞こえた。
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