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第9章
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しおりを挟むヨシュア王や将軍の命令の前に、感情を爆発させた兵士達による思いがけなかった突然の攻撃。
矢の数と範囲が広すぎて、短い詠唱の魔法で全てを防ぐのは不可能。
剣を拾いに行っても、時間が足りない。
「ッ……!!」
俺はとっさにガーネットを自分の背後に誘導すると、自らの身体を盾にしようと身構えた。
すると、その瞬間。
「ーー我々を忘れてもらっては困りますね」
聞きなれた声、安心する言葉。
俺とガーネットの前に、待っていましたとばかりに瞬時に登場してくれる頼もしい……。アルトを始めとする、みんなの背中。
彼等の手によって、水の兵士達が放った矢は全て剣や槍で斬り落とされ、地面に落ちて行った。
「……さぁ、クウォン様。
好きな女性が……。ガーネット様があそこ迄なさって貴方の腕の中に飛び込んで来たのです。
ここでクウォン様がハッキリしないと、男がすたりますよ?」
アルトが顔だけ振り返り、俺に言う。
みんなも、顔を俺に向けて何か言いたげに微笑っていた。
「ーーだなっ!!」
少し意地悪そうに微笑むその表情に、俺は答えるように頷いて笑顔を返す。
もう、怖いものなんて何もなかったーー。
俺はすうっと息を吸うとみんなに向かって叫ぶ。
「ここを突破し、みんなで生きて帰るぞッ!!
いいかっ?誰一人欠ける事は許さん!無益な殺生もするな!生きて帰る事だけ考えて進めッ……!!」
俺の命にみんなは「はっ!!」と声を揃えて返事をすると、逃すまいと殺気立った水の兵士達を迎え討つ。
そんな中。気付けばいつも側に来ている黒炎に跨ると、俺は自分の前に一緒にガーネットを乗せ抱き締める。
「一緒に、帰ろう」
「……はいっ!」
その返事を聞いたら、何でも出来る気がした。
臆病で、父上や周りに流されていた俺はもういないーー。
”勝利の愛の石”を手にして、俺は変わった。
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