白き髪のガーネット【改訂版】

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
70 / 85
第9章

9-2

しおりを挟む

「……受けよう。
その申し出、受ける」

同じ想いが、確かにあったのだと感じる。

……もう、想い残す事はないーー。

俺は腰から剣を抜くと、そのまま構えた。
ガーネットの決意が鈍る事がないように、表情は決して崩さない。

俺は、彼女の両親を奪った冷酷な男だ。
ガーネットの為に、最期まで嘘つきの男で在ろう。

「……ありがとう。
……。さよなら……」

ガーネットはそう呟くと……。その場を駆け出して、俺の元に一直線で向かってきた。

その姿を見た時。
彼女と過ごしてきた10年間の想い出が、俺の中で溢れて……。

俺の気持ちはもう、ガーネットしか見ていなかったーー。

俺を信じて付いてきてくれたみんなの為に”生きなくては”と、思った気持ちが吹き飛んで……。愚かな一人の男が、ここに居た。

振り上げられた彼女の剣を受け止めようと掲げた剣を持つ俺の手は、ただのフリ。

……もう、演技なんて出来なかった。
これで最期ならば……。

ーーもう一度ガーネットを抱き締めたいーー

と、それだけが頭に浮かんだ。


ガッキイィィーンッ……!!

二つの剣がぶつかった金属音が鳴った。
その瞬間、俺の剣を持つ手から力が抜けて……柄が手から離れた。

俺は目を閉じると、両手を彼女に広げて抱き留める。
刺されてもいい、殺されてもいい。
俺は死を覚悟して、愛おしい温もりを抱き締めた。

……
…………。

腕の中に閉じ込めた、愛おしい、暖かい温もり。確かめるようにギュッと力を込めると……。俺の耳にドスッ!ドスッ!と、剣が二つ、地面に突き刺さるような音が聞こえた。

何故だ?
覚悟した筈の痛みを、感じないーー。

俺がゆっくり目を開けて辺りを見渡すと、少し離れた地面に突き刺さる二つの剣。

……そして。
俺の腕の中には、震えているガーネット。
俺の背中に手を回し、服を力一杯握り締めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】巻き戻りを望みましたが、それでもあなたは遠い人

白雨 音
恋愛
14歳のリリアーヌは、淡い恋をしていた。相手は家同士付き合いのある、幼馴染みのレーニエ。 だが、その年、彼はリリアーヌを庇い酷い傷を負ってしまった。その所為で、二人の運命は狂い始める。 罪悪感に苛まれるリリアーヌは、時が戻れば良いと切に願うのだった。 そして、それは現実になったのだが…短編、全6話。 切ないですが、最後はハッピーエンドです☆《完結しました》

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

あなたの側にいられたら、それだけで

椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。 私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。 傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。 彼は一体誰? そして私は……? アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。 _____________________________ 私らしい作品になっているかと思います。 ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。 ※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります ※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...