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第5章
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しおりを挟む『10年前の戦に巻き込まれて、父上と母上と一緒にっ……。もう生きていないかと……ッ』
私の、父様と……母様?
ヨシュア兄様は、私の……兄様。
そして、水の国の……現国王様。
私、は……水の国の……姫?
ドクンッ……!!
と、心臓が痛い位に身体に響いた。
ヨシュア兄様の腕の中でカタカタと震える私。
そんな私の両肩を掴んで、ヨシュア兄様が怒りの込もった瞳で見つめてくる。
「っ……そうだ!何故だッ?
何故、炎の国の第三王子の側室なんかにっ!?」
っ……何故?
……何故、って……それ、は……。
優しいヨシュア兄様の怒りに満ちた表情と言葉に、私は動揺を隠せない。
何故、クウォンの側室になったか?って……?
……だって。彼は優しくて、いつだって私を守ってくれた。
私は、クウォンが好きで……大好きで……。
彼も、私を愛してくれている。……から……。
心の中の想いを、上手く口に出来ない。
そんな私に、ヨシュア兄様から信じられない現実が突き付けられる。
「あいつはっ!和平を願う父上を騙し討ちして、母上の命まで奪った男なんだぞッ……!!」
「……。
……。え?っ……」
何を言われたのか、一瞬分からなかった。
……ううん。
信じたく、なかった。
「……。……う、そ。
そんなの……嘘、だよ……っ」
否定、したい。
もっと、強く否定したいのに……。私の口から出た言葉は、あまりにも小さくて弱々しい声だった。
”嘘”だと言いながらも……。口から出た言葉とは反対に、私には”あの日”の光景が浮かぶ。
幼い日に何度も夢に見た、怖い夢。
私の大嫌いな、戦の夢。
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