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第4章

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っ……こ、ここ。
ここって……もしか、して……ッ。

離宮の階段を最上階まで登って、クー兄様が私を連れてきたのは私の部屋とは比べ物にならない位に広い部屋。

聞かなくても分かる。
いつもクー兄様から香るいい匂いがする部屋。間違いなくクー兄様の部屋だ。
装飾品とかはそんなになくて、必要最低限の生活用品しか置いていないのが彼らしい。
王子様だからと言って特別に飾らず、贅沢という贅沢もしていないと思う。

「そんなに見渡されると照れるな。別にたいした物は何もないよ?」

キョロキョロと部屋を見ていた私をゆっくり腕から降ろすと、クー兄様は微笑みながら窓を開けてバルコニーに誘うように手招きした。

「!……わぁ~っ!!」

導かれバルコニーに出た瞬間、その絶景に思わず釘付けになる。
炎の国全体だけじゃなくて、その向こうまで……。まだ行った事のない土地の方まで見渡せる。

思えば今までこの離宮を離れた事なんてない。クー兄様にたまに丘の方や、近隣の村や町には連れて行ってもらった事があるだけで私はずっと狭い世界で生きてきた。

ーーでも、これからは羽ばたきたい。
仕事で忙しく飛び回るクー兄様と一緒に、クー兄様が見ている世界を私も隣で見て生きたい。


「……クー兄様。あのね!」

決意を胸に自分の気持ちを伝えよう視線を移すと、クー兄様がバルコニーの塀に頬杖をつきながら私の方を見ていて……瞳が重なる。

「っ……」

その優しい瞳と表情にドキンッと鼓動が跳ねて言葉を詰まらせた私の頬に、伸ばされたクー兄様の大きな手が触れた。

「……可愛い顔。ずっと見てたくなる。
今日はまた一段と綺麗だよ」

頬に触れている手の親指が私の唇をなぞるようにゆっくり動いて、クー兄様が熱っぽい色気を帯びた表情で見つめてくる。

それは”特別な人”を、見つめる瞳ーー。
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