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第3章

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「……。うん。
綺麗な人、だったよ。とても……」

恥ずかしくて顔を伏せていた私の問い掛けに答える、クー兄様の声が聞こえた。
その少し悲しそうな、懐かしむような声に顔を上げてみると……。クー兄様は切ない瞳で、でも微笑んで、少しだけ頬が赤かった。

「優しいのに強くて……。素敵な人だった」

「っ……」

ズキッと痛む胸。
母様の事を想って語るクー兄様を見て、一瞬で自分の熱が冷めるのを感じた。

墓穴を、掘った。
なんで、母様の事なんて話題にしたんだろう?
何故、気付いてしまったんだろう。

クー兄様は、きっと母様の事がーー……。

身体は時が止まったようなのに、頭の中だけは色んな思いが渦巻く。

もしかして私を引き取ったのも、傍に置いてくれるのも……。私が、母様に似ているから?
母様の身代わりなの?私は……。

そんな考えが溢れそうになった時。

「ーーお寛ぎのところ、申し訳ございませんっ!」

馬が駆けてくる足音と共にアルトさんの声が近くで聞こえて、私はハッと我に返った。

「クウォン様、王がお呼びです。
至急、城にお向かい下さい」

「……やれやれ。
せっかく帰って来たのに、息つく暇もないな」

アルトさんの伝令にクー兄様は溜め息を吐くと、私の頭をポンポンッと撫でて微笑む。

「せっかくゆっくりデートしようと思ったのに、ごめんな?
……アルト、悪い。俺はこのまま城に向かうからガーネットを離宮まで頼む」

「はっ、かしこまりました」

アルトさんのハキハキとした返事を聞くとクー兄様は黒炎こくえんに跨って、あっという間に私達の前から去って行った。

……
…………。
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