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第3章

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「ガーネットの名前はね、俺が付けたんだ」

「!……えっ?」

信じられないクー兄様の言葉に私は鳩が豆鉄砲。
あまりに予想外過ぎて思わず呆気にとられて見つめていると、クー兄様はフッと微笑みながら話し始めた。

「ガーネットの宝石はね、別名”勝利の石”。
忍耐力と精神力を養って、困難や障害に負けず、前向きに乗り越えられるよう力を貸してくれる。
叶えたい夢や願望を見失ってしまいそうな時、初心の情熱を呼び起こして、揺るぎない信念をもたらしてくれるって言われてて、これまでの努力を実らせて勝利に導いてくれる石なんだ」

優しい言葉で紡がれた、私の名前の由来。

「見た目じゃないよ。
ガーネットは俺にとって、その宝石みたいな存在って事」

そう言ってクー兄様は身を起こすと、風になびく私の白髪に触れながら、今まで見た事がない位の優しく強い瞳で私を見た。

そして……。
私の白髪をとても愛おしそうに引き寄せてそっと口付けると、そのまま上目遣いのとても色っぽい表情でじっと私を見つめ直す。

「っ……!!」

ドキンッと跳ね上がる鼓動。
全身が心臓になったみたいに響き渡る。

突然”特別な人”を見つめるような、男性の瞳をしたクー兄様。
嬉しいけど、まだ私には刺激が強すぎて心臓が……。
身がもたない。

「こ、子供の名前を付けるくらいっ……。クー兄様と母様は仲がよかったのね!」

「!……え?」

「か、母様って……どんな人だったのかな?
き、綺麗……だったのかなぁ~?」

「……」

すっかり動揺した私は、この状況を誤魔化す為に思わず話題を振った。
母様の事が気にならないか、と言ったら気になるが正直この時は深い意味はなくて……。

ーーでも。
私はこの話題に地雷を踏んで後悔する。
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