20 / 85
第3章
3-3
しおりを挟むその様子にハッと我に返ると、私は慌てて立ち上がり身だしなみを整える。
「お、お帰りなさい!クー兄様!……っ」
同盟を結んでいる国へ行っていたクー兄様の一ヶ月振りの帰還。
それなのに、自分の今の姿は正直ないと思った。
朝からずっと稽古をしていて、女性らしさの欠片もない訓練服の上に土や埃で汚れた自分。何よりも、絶対に汗臭い。
久々に会えたのに色んな意味で真っ直ぐに顔を合わせられない。
なんでこんなタイミングで帰ってくるのよーー!
と、赤い顔を俯かせていると……。
「メル、悪い。
ガーネットを借りるからな!」
頭上からクー兄様のそんな声が聞こえたかと思うと、逞しい腕に力強く引き寄せられてあっという間に私も黒炎の上に乗せられていた。
「!っ……え?えぇえーーッ?!」
「よし!行くぞ……!」
一瞬の出来事。まるで私を攫うように、クー兄様は黒炎を走らせた。
っ……近い!近すぎるよぉ~っ!!
馬上で抱きかかえられるようにして前に乗っている為、私の頭が丁度クー兄様の口元に……。そして、すごく密着している。
や、やだやだっ……!
こんな汚くて、こんなに汗かいてるのに……っ!!
更にこの状況で余計に熱くなって汗をかいてしまう。対するクー兄様は相変わらずすごくいい匂い。
恥ずかしくて、逃げ出したくて、少しでも身体を離そうとすると……。
「ガーネット、危ない」
「っ……!」
私の身体にしっかりと回されたクー兄様の片腕が、ギュッと離れそうな距離を縮めてくる。
……こんなの、反則だよっ。
ドキドキが止まらない。
嬉しくて、大好きが溢れて、もう離れたいなんて思えない。
ずっとこの腕の中に居たいと思ってしまう。
クー兄様。
私は、貴方を……愛しています。
……
…………。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
一目ぼれした小3美少女が、ゲテモノ好き変態思考者だと、僕はまだ知らない
草笛あたる(乱暴)
恋愛
《視点・山柿》
大学入試を目前にしていた山柿が、一目惚れしたのは黒髪ロングの美少女、岩田愛里。
その子はよりにもよって親友岩田の妹で、しかも小学3年生!!
《視点・愛里》
兄さんの親友だと思っていた人は、恐ろしい顔をしていた。
だけどその怖顔が、なんだろう素敵! そして偶然が重なってしまい禁断の合体!
あーれーっ、それだめ、いやいや、でもくせになりそうっ!
身体が恋したってことなのかしら……っ?
男女双方の視点から読むラブコメ。
タイトル変更しました!!
前タイトル《 恐怖顔男が惚れたのは、変態思考美少女でした 》
幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在
一緒にいるのに 言えない言葉
すれ違い、通り過ぎる二人の想いは
いつか重なるのだろうか…
心に秘めた想いを
いつか伝えてもいいのだろうか…
遠回りする幼馴染二人の恋の行方は?
幼い頃からいつも一緒にいた
幼馴染の朱里と瑛。
瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、
朱里を遠ざけようとする。
そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて…
・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・
栗田 朱里(21歳)… 大学生
桐生 瑛(21歳)… 大学生
桐生ホールディングス 御曹司
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
君と桜を見たあの日から
緒夢 來素
恋愛
主人公の水原和鷹は一人の女性に恋をしていた。叶うはずのないと分かっていた。その女性
は二歳年上の兄と同級生の長谷川芳江だった。小学校からの初恋相手だった。
幼くして叶わないと思ったのには理由があった。それは兄と芳江が互いに好意があるのだ
と隣で見ていて分かるものだったからである。
そんな中、和鷹に好意を寄せていた瀬良柚葉が現れ、中学一年の夏柚葉から告白される。
和鷹は芳江への思いを引きずりながらも断る理由がなく、柚葉と付き合うことになる。
そうして楽しい中学生活を二人で過ごすも中学を卒業する時和鷹は親の都合で引っ越さな
ければいけなくなってしまい、それを転機に別れてしまう。
柚葉との関係を続ける事も出来たものの和鷹は柚葉に対してそこまで異性としての好意を
持っていた訳ではなく軽い気持ちで別れを告げてしまう。
心機一転し新たな土地、新たな高校に入学するもそこでいじめに遭い
高校を退学してしまった和鷹は失意の中芳江に勉強の面倒を見てもらう
だが和鷹の思いは芳江ではなく、むしろ柚葉に向いていた。
柚葉と別れたことに対する後悔の念を抱きながらもなんとか大学に進学すると、そこには
柚葉の姿があった。
だが再会した柚葉はどういう訳か記憶を失っていた。
そんな柚葉の傍らに柚葉と高校の時に仲が良かった、神谷春樹、朝比奈百桃により「柚葉に近づくな」忠告を受ける。ある日和鷹は柚葉に招かれ一冊の日記を見つける。そこに書かれた内容を知りお互いに距離を縮めていく。
【完結】巻き戻りを望みましたが、それでもあなたは遠い人
白雨 音
恋愛
14歳のリリアーヌは、淡い恋をしていた。相手は家同士付き合いのある、幼馴染みのレーニエ。
だが、その年、彼はリリアーヌを庇い酷い傷を負ってしまった。その所為で、二人の運命は狂い始める。
罪悪感に苛まれるリリアーヌは、時が戻れば良いと切に願うのだった。
そして、それは現実になったのだが…短編、全6話。
切ないですが、最後はハッピーエンドです☆《完結しました》
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる