6 / 85
第1章
1-1
しおりを挟む
【ガーネット7歳】
ここは炎の国。
第三王子クウォン様が住む離宮の中庭。
「ガーネット様!危のうございます!」
「お止め下さいましっ!!」
私が登る高い高い木の下で、お付きの侍女達が血相を変えて叫んでいる。
「だいじょ~ぶ!あと少しだもん!」
私は侍女達を高い木の上から見降ろしニコッと微笑むと、再び上を見て木を登り続けた。
私が目指す先には、不安そうに鳴き続ける子猫。
ついさっき、いつものようにこの中庭に遊びにきたら聞こえたんだ。
鳴き声を頼りに場所を探っていたら……。
なんと、この離宮で一番高い木の上から。
下から見上げると、ちょうど木の真ん中位の枝で子猫が震えながら降りられなくなっていた。
高い高い木の上。
さすがに1番上まで行くのは怖いけど、途中までなら……。と、私は侍女達の目を盗んで木を登り始めたのだ。
……あと少し。
あと、少し……。
次第に近くなる鳴き声。
確か下から見た時はこの辺りだった筈だと見渡すと、枝に生い茂る葉と葉の間に身を潜めるように子猫は居た。
思わずパッと笑顔になる。
「いい子だね。こっちにおいで?」
私は怯えている子猫を安心させるように微笑みながら手を伸ばす。
はやる気持ちを抑えて、すぐに触れたりはしない。
子猫が鼻先に差し出した私の手の匂いをクンクンと嗅ぎ、スリッと指に顔を擦り寄せたのを確認すると、ゆっくり子猫のお腹に手を回して自分の胸にそっと抱き寄せた。
やったぁ~!!
心の中で思わずガッツポーズ。
「もう大丈夫だからね。一緒に下に行こう?」
声をかけると子猫が返事をするように短く「みゃう」と鳴く。その様子と暖かい温もりに子猫が元気だとホッと一安心。
しかし、それも束の間。
ふと我に返った私は、自分の置かれている状況をみてゾッとした。
ここは炎の国。
第三王子クウォン様が住む離宮の中庭。
「ガーネット様!危のうございます!」
「お止め下さいましっ!!」
私が登る高い高い木の下で、お付きの侍女達が血相を変えて叫んでいる。
「だいじょ~ぶ!あと少しだもん!」
私は侍女達を高い木の上から見降ろしニコッと微笑むと、再び上を見て木を登り続けた。
私が目指す先には、不安そうに鳴き続ける子猫。
ついさっき、いつものようにこの中庭に遊びにきたら聞こえたんだ。
鳴き声を頼りに場所を探っていたら……。
なんと、この離宮で一番高い木の上から。
下から見上げると、ちょうど木の真ん中位の枝で子猫が震えながら降りられなくなっていた。
高い高い木の上。
さすがに1番上まで行くのは怖いけど、途中までなら……。と、私は侍女達の目を盗んで木を登り始めたのだ。
……あと少し。
あと、少し……。
次第に近くなる鳴き声。
確か下から見た時はこの辺りだった筈だと見渡すと、枝に生い茂る葉と葉の間に身を潜めるように子猫は居た。
思わずパッと笑顔になる。
「いい子だね。こっちにおいで?」
私は怯えている子猫を安心させるように微笑みながら手を伸ばす。
はやる気持ちを抑えて、すぐに触れたりはしない。
子猫が鼻先に差し出した私の手の匂いをクンクンと嗅ぎ、スリッと指に顔を擦り寄せたのを確認すると、ゆっくり子猫のお腹に手を回して自分の胸にそっと抱き寄せた。
やったぁ~!!
心の中で思わずガッツポーズ。
「もう大丈夫だからね。一緒に下に行こう?」
声をかけると子猫が返事をするように短く「みゃう」と鳴く。その様子と暖かい温もりに子猫が元気だとホッと一安心。
しかし、それも束の間。
ふと我に返った私は、自分の置かれている状況をみてゾッとした。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる