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(7)リディアside

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【リディア28歳6月/診療所】

「……。
……赤、ちゃん?」

私はそっと、震える手で自分のお腹に触れた。
勿論、まだ膨らみもない。
動く訳も、ない。

……けど。
堪え切れない涙と一緒に、愛おしさが溢れた。


あの、時の?
ヴァロンの、赤ちゃん……っ。

間違いない。
それは紛れもなく、大好きな彼との子供。
共に過ごした最後の夜。
ヴァロンと愛し合った時に出来た命だった。


……産みたい。
私っ……絶対に、産みたい……!

そう強く願う私。

……けれど。
医師は私のそんな様子を見てか、冷静に状況を告げる。


「……治療で薬を使えば、胎児にも何らかの影響が出ます。
リディアさん、治療を続けながらの出産は無理です」

医師はハッキリと、そう言ってくれた。
哀れまない、同情しない。
そんなところが、少しヴァロンと似た医師だった。


「……治療をしなかったら。
私は、どの位……生きられますか?」

「……1年が、限界です。
それに、かなりの苦しみや激痛を伴います。
貴女の身体が保つ保証は、ありません」

医師の言葉を聞いて、私の心は……決まった。


「1年。……充分です。
今までの人生に比べたら、どんな痛みや苦しみも私は乗り越えられます。
先生、この子が無事に産まれて来られる様に……。
私に力添えを、お願いします」

お腹を抱きかかえる様にしながら、私は医師に深く頭を下げた。

……
…………。
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