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(2)ギルバートside
2-3
しおりを挟むそして、男はそのリボンに優しく口付けて……。誓いの台詞を言う。
そこはこの舞台の前半が終わる大事なシーン。
男が誓いの台詞を泣きながら叫ぶ、場面。
目の前の少年が、どんな風に演じるのか……。
呼吸をするのも忘れて、僕は魅入った。
……すると。
少年は、ゆっくりと観客の方を見て……笑った。
!?……えッ?
大事な感動の場面で、笑った。
勿論、声を出して笑っている訳ではない。
……けど。
愛おしい人と引き裂かれて、悲しみに満ちた表情ではない。
嘘だろう?あり得ない。
と、思うのに……。
少年の表情から、目が逸らせない。
少年は演技を続け、口付けたリボンをゆっくりと自分の手首に巻き始めた。
『……生まれてくる場所が違えば、僕等はこんなに離れなくてすんだのに……。
神様はどうして君と僕を出逢わせたんだろう?』
少年の台詞を言う声のトーンが、変わった。
本来なら引き離された男が、自分の生まれた場所と運命を悲しんで否定する台詞。
……でも、少年の口調は。
自らの運命を、否定しない。
この状況下で誰を恨む事もせず、己の無力さを認めて……。言っているようだった。
その表情は、とても幼い少年が出来るようなものじゃない。
困った苦笑にも見えれば、不敵に笑っているようにも見える。
そう、希望も絶望もない状況でも……。
濁りのない、曇りのない……瞳。
少年は、手首に巻き終わったリボンに頬を擦り寄せる。
目を閉じて、顔を少し斜めにして……。
顔の横に掲げた手首のリボンに甘える様なその仕草は、女性でなくても……。キュンとときめく。
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