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第9章 (1)ヴァロンside
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しおりを挟むリディアは俺に自分の事をあまり話さなかったが、身寄りがなくマスターが保護者のような存在だった事は昔聞いた。
……よく考えたら、リディア。
俺はお前の事を大して何も知らなかったんだな。
そんな事を思いながら、俺はアカリとシュウと一緒にリディアの墓を探した。
幾つかに区切られた墓地の中から、更に一つの墓を探すのはかなり難題だと思う。
……でも。
俺には何故か見付けられる自信があった。
きっと逢えると、感じていたんだ。
サアァ……ッと心地良い風が吹いて、頬を優しく撫でられた瞬間。
「!!ッ……」
フワッと花の香りが俺に届いた。
それは、懐かしい香り。
初恋の、香り。
「……。リディア?」
間違う筈がない。
リディアの付けていた、香水の香り。
「ッ……!!」
気付いたら、俺は一人で駆け出していた。
俺達の職業で香水を付ける事は珍しい。
香りは人に強い印象を与えてしまい、身を隠す際や一度会った人物には特定されやすく仕事がやり辛いからだ。
でも、リディアはあえて常に香水を付けていた。
自分の存在を主張するように。
『アンタ、綺麗ね。その容姿は神様があんたに与えてくれた財産よ。
隠す必要ないわ。むしろ、見せてやりなさい!』
俺にそう言った、出逢った頃と変わらない。
それは堂々と生きていた、彼女の証。
リディアの魅力の一つだった。
丘を駆け上がり。
俺は一番上にある墓地を目指す。
……
…………。
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