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第5章 (3)ヴァロンside

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別に何て言ってほしいなんて、思ってない。
慰めの言葉も、否定の言葉もほしくない。

それなのに、こんなアカリを試すような問い掛け。
本当に酷い、男。

嫌われても、仕方ない。
愛してもらえなくて、当然だ。

誰よりも何よりも、自分に絶望した。


でもーー。

 「……。どうも、しないよ」

目を逸らそうとした俺に、アカリが言った。

「……は?」

俺は、意味が分からなくて……。アカリを見つめると、彼女は微笑んでいた。
乱れた着衣を直すと、いつもと変わらない笑顔でゆっくり歩み寄って来て俺を見上げた。

「どうもしないよ?何も変わらない」

「……」

アカリは俺の手から雑誌を取って、スタスタと部屋の隅にあるゴミ箱へ行くと……。雑誌を捨てて、俺に向かって頭を下げた。

 「ごめんなさいっ……!!」

アカリの言葉が、部屋に響く。

「嫌だって言ってたのに……。雑誌、見ちゃってごめんね?」

俺に向かって、謝るアカリ。

酷い事をしたのは、俺だ。
酷い言葉を吐いたのは、俺だ。

……なのに、どうして?

じっと立ち尽くしたままの俺。

アカリは頭を上げると、そのまま棚へ向かって救急箱を手にすると……。俺の傍に戻ってきた。

「……手当て。するね?」

救急箱をテーブルに置いて、アカリの暖かい両手が俺の左手を包むように触れる。

「自分の事も、大切にして?

ヴァロンのこの手には、たくさんの人の夢が詰まってるんだから……」

そう言って手首に湿布を貼ると、アカリは包帯を巻きながら俺に話し続けた。
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