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第3章 (6)シュウside

6-3

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「……。
完敗、ですね。私の負けです、ヴァロン」

「はぁ?!お前今手ぇ抜いただろ!納得いかねぇ!」

素直に負けを認めた私を、ヴァロンは本気で不満そうに怒る。彼が可愛くて、私は思わずフフッと笑った。


「……やっと、本当の笑顔になったな?」

「!……え?」

ハッとすると、とても優しい表情のヴァロンが私を見つめていた。

「結婚、緊張してんのか?
ずっと表情固かったもんな、お前」

「っ……」

人が普通に振舞おうとしてるのに……。何で、君は気付いてしまうんだろう。

ーー駄目だ。
これ以上、ヴァロンに見つめられたら……。


「……ヴァロン。
任務、そろそろ行かないと遅れますよ」

平然を装って、ヴァロンの上着を拾おうと私は目を逸らした。

拾った上着を、ゆっくりヴァロンに差し出そうとすると……。


「ーーシュウ」

彼が私の名前を呼んで、差し出した腕を掴んで引き寄せて……。ギュッと、抱き締めてくれた。
上着が私の手から、静かにパサッと落ちる。

喜びよりも、驚いた。
ドキドキよりも……。心臓が止まったように静かになる。


「……行ってくるわ」

心地良い彼の声と温もり。

たった一言。それだけで錯覚でも安らいだ気持ちになる。

「……。
はい、行ってらっしゃい」

そう答えると、ヴァロンはゆっくり私から離れた。
上着を拾って肩に掛けるように持つと、彼は颯爽と任務に向かって歩き出す。

そんなヴァロンの背中を見つめる私は……。きっとあの日、任務に向かうリディアを見つめていた彼の瞳と同じだった。

……
…………。
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