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第3章 (5)シュウside
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「シュウ。
お前もそろそろ身を固めろ」
「!……えっ?」
夢の配達人隠れ家の、マスターの部屋。
呼び出された私に告げられたのは、耳を疑いたくなる現実ーー。
マスターが……。父が私に差し出したのは、一枚のお見合い写真。
「出来れば、自由恋愛で結婚させてやりたかったが……。お前は未だに恋人の一人もおらんだろ?
もう25歳、そろそろ……」
「ま、待って下さいッ……!っ……私は、まだッ……」
結婚……?
知らない、女性と……?
ーー嫌、だ。無理、だッ……!!
上手く呼吸が出来ないくらい、パニックになる。
想像も出来ない。
したくもない。
写真も受け取らずに、私は激しく首を横に振った。
「……嫌ですッ!
私はっ……。誰とも結婚しませんッ……!!」
叫んだ直後。
バシンッ……!
と、頬を引っ叩かれて……。
眼鏡が、床にカシャンッ……と落ちた。
父に、初めて打たれた。
「……。
ヴァロンと居たいなら、務めは果たせ。
次期マスターとしての務めだ」
「!……ッ」
父が、私を真っ直ぐ見て言った。
もう、眼鏡なしではあまり見えない私の目。
けれど……。この時の父の瞳だけは、ハッキリ見えた。
父として、マスターとして……。すまない、頼む。と、揺れていた。
……バレて、いた。
父には全て悟られていた。
私がヴァロンに抱く気持ち。
夢の配達人は、今ではもう世の中にとって……。失くす事の出来ない職業の一つになっていた。
父が築いたたくさんの人々の、夢。
簡単に潰すことはもう出来なかった。
そして、隠れ家内の争いを避ける為。父はマスターを継承するのは私達血族のみだと、定めた。
父には私しか子供がいない。
次期マスターとして、現マスターの唯一の息子として……。
私は、自分の血を遺さなくてはならない。
それが、私の……務め。
「シュウ。
お前もそろそろ身を固めろ」
「!……えっ?」
夢の配達人隠れ家の、マスターの部屋。
呼び出された私に告げられたのは、耳を疑いたくなる現実ーー。
マスターが……。父が私に差し出したのは、一枚のお見合い写真。
「出来れば、自由恋愛で結婚させてやりたかったが……。お前は未だに恋人の一人もおらんだろ?
もう25歳、そろそろ……」
「ま、待って下さいッ……!っ……私は、まだッ……」
結婚……?
知らない、女性と……?
ーー嫌、だ。無理、だッ……!!
上手く呼吸が出来ないくらい、パニックになる。
想像も出来ない。
したくもない。
写真も受け取らずに、私は激しく首を横に振った。
「……嫌ですッ!
私はっ……。誰とも結婚しませんッ……!!」
叫んだ直後。
バシンッ……!
と、頬を引っ叩かれて……。
眼鏡が、床にカシャンッ……と落ちた。
父に、初めて打たれた。
「……。
ヴァロンと居たいなら、務めは果たせ。
次期マスターとしての務めだ」
「!……ッ」
父が、私を真っ直ぐ見て言った。
もう、眼鏡なしではあまり見えない私の目。
けれど……。この時の父の瞳だけは、ハッキリ見えた。
父として、マスターとして……。すまない、頼む。と、揺れていた。
……バレて、いた。
父には全て悟られていた。
私がヴァロンに抱く気持ち。
夢の配達人は、今ではもう世の中にとって……。失くす事の出来ない職業の一つになっていた。
父が築いたたくさんの人々の、夢。
簡単に潰すことはもう出来なかった。
そして、隠れ家内の争いを避ける為。父はマスターを継承するのは私達血族のみだと、定めた。
父には私しか子供がいない。
次期マスターとして、現マスターの唯一の息子として……。
私は、自分の血を遺さなくてはならない。
それが、私の……務め。
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