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第8章 (1)たくさんのありがとう

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「……彼を、自由にしてあげられなかったものっ」

あの時。
バロンに召使いを辞めさせて、この別荘から……。いや、私から解放してあげる事も出来た。

けど、私は彼と離れたくなくて……。
少しでも自分の目の届く所にいてほしくて、警備の任を与えた。


「ひどいよね?
遠ざけておきながら、離れる事も許さないなんて……」

「……アカリ」


立場上、気持ちを伝える事も、応えてあげる事も出来ない。


でも、思うんだ。

もしも、私があの時バロンに気持ちを伝えて……。
私をこの場所に帰したくないと言った彼の手を、何の考えもなしに取るような女だったら……。

きっと彼は、私の事を……。

……
…………。
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