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第2章 (2)バロンとヴァロンとバロン

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でも、大変大変と気持ちが焦るばかりで……。
手当ての仕方なんて分からなくて、私にはそれ以上何も出来なかった。

そんな自分がもどかしくて、なんだか悔しい。
しゅんと落ち込んでいると、俯く私に彼が言う。


「サンキュ。助かる」

まさかのお礼の言葉に「え?」と顔を上げたら、目の前にあるのは彼の笑顔。
その笑顔を見たら嬉しくて嬉しくて、私もまたすぐに笑顔になっていた。

……。

彼が手当てを済ませる頃ーー。

いつもよりはしゃいでいた私は睡魔に襲われ、うつらうつら。
彼はそんな私をベッドに寝かせてくれて、枕元に居てくれた。


「……ね、おにいちゃん。おなまえは?」

「……。ヴァロン」

私の問い掛けに、彼は答えてくれた。
それだけ、嬉しくて嬉しくて……。

でも……。


「ばろん……?」

「バ、じゃない。ヴァ、だから……」

「ば?……ばろん?」

「ヴァ、ね。……発音違うから。
……。お前頭悪そうだな……」


幼い私に、彼の名前は難しくて……。
結局、まともに呼ぶ事は出来なかった。

……
…………。
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