スノウ

番外編③杏華side

③-2-2

「ボクは仮屋崎かりやざき 海斗かいと！一年前から第１部隊に入ったんだ！
よろしくな、雪ゆき！」

自ら歩み寄り、自己紹介をして、握手を求めるように手を差し出す海斗かいと。
でも雪ゆき君は全くの無反応で、俯いたまま返事もしなければ差し出された手を取る事もしない。その態度に、私はムッとした。
別に海斗かいとを庇う訳でも特別に想っている訳でもないが、新人のクセに自分から挨拶をしない人間を快く思う事なんて私には出来なかった。更に……。

「あ～……ごめんな、海斗かいと。雪ゆきはな、ちょいと色々あって今まで俺とマリィ以外の人間とほとんど接した事がねぇんだ。
だから馴染むまでに少し時間がかかると思うが大目に見てやってくれ。ゆっくり簡単な言葉で話してやればこっちが言ってる事は理解出来るからさ」

雪ゆき君を庇うような紫夕しゆうさんの言動が、私は気に入らなかった。だからつい、思わず言ってしまった。

「そんなの甘えですよ。もう16歳なんだし、彼は仮にも守護神ガーディアンに就職してこうして隊に入った社会人なんですよね？
新人なのに、目上の先輩に先に自己紹介させた挙句何の反応もなし？普通、自ら先に挨拶するのが常識だと思います」

一瞬シンッとなってしまう現場。
苛々が思ったよりも溜まっていたみたいで、自分が間違った事は言っていないと思う半面。想像していたよりも冷たい厳しい口調で言ってしまった事には、少々後悔した。
見た目が大人っぽい事は自覚していたからせめて口調や表情には気を付けて、クールな女性ではなく可愛く見られるようにこれまで努力してきたと言うのに……。

紫夕しゆうさんに、引かれたかしら……。

咄嗟にそう思って目を逸らした。
海斗かいとが少々驚いているのは視界に映ったが、紫夕しゆうさんの反応が気になるけど怖くて……しっかり見る事が出来ない。