スノウ

番外編②雪side

②-1-3

「……。
作り過ぎちゃった……」

そんなこんなで、考え事をしながら調理していたらいつの間にか朝ご飯にしてはかなりのボリュームの食事が出来上がってしまった。
自分用にフレンチトーストとサラダ。
紫夕しゆうは朝に甘い物は嫌がるから、半熟のベーコン入りスクランブルエッグにウインナーを焼き、更にじゃがいものソテー。野菜嫌いな紫夕しゆうがたくさん野菜を摂れるように作った具沢山スープ。デザートにフルーツヨーグルト。
どれも普段より量が増し増しだ。

……ま、いっか。
あとは、紫夕しゆうにご飯が良いかパンが良いか聞くだけだ。

出来上がった食卓を見て「うんっ」と頷くと、オレは紫夕しゆうを起こしに行こうと奥の部屋に足を踏み入れた。その時、積んであった雑誌が足に当たりバサバサッと崩れてしまう。

あ、やっちゃった。
また紫夕しゆうが床ここに積んだんだな……。

何度本棚に収納しても、紫夕しゆうは自分の手の届く場所に物を置きたがる。オレが怒ると「ごめんごめん！」って手を合わせて謝るけど、なかなか直らない。
仕方なく床に屈んで、崩れた雑誌を手に取ってみた。

……あ、エッチな本。

崩れた雑誌は、女の人が下着姿や裸で写ってる写真集と言うやつだった。パラパラと中を覗いてみるが、素直にオレにはこれの何処が面白いのか分からない。
でも、海斗かいとも「やっぱりせっかくなら、胸はおっきい方がいいよな～！杏華きょうかさんみたいに！」って言ってた。
杏華きょうかの事は綺麗だと思うし、好きだ。けど、それはやはり仲間としてだし、オレは別に裸が見たいとは思わない。

オレ、おかしいのかも……。

幼い頃に引き取られた先で女の人の代わりをさせられて、抱かれ続けて……。自分はすっかりおかしくなってしまったのかも知れない。

男が女性に感じる気持ちが、分からないーー。

そう思ったら、ふとある思いが浮かんだ。

……もし。
紫夕しゆうがいつか、また女の人に触れたいって思う日が来たら……オレは、どうすればいいんだろう？

紫夕しゆうはオレに「ずっと一緒に居て」って言ったけど、やはりこういう本を目にすると自分の身体とは全く違う事に不安が過った。