スノウ

最終章（２）紫夕side

10-2-2

守護神ガーディアンを辞めて、一緒に白黒の子猫を迎えに行って、俺達を誰も知らない場所で一から生活を始めようーー。

いいか、雪ゆき？
お前がいいって言ったんだから、新しい家では風呂は毎日一緒に入るんだぞ？拒否権はないからな～？覚悟しておけよ！

ああ？いいって、生活費は俺がしっかり稼いでくるから、お前は家の事頼むよ。なっ？
あ、買い物は俺が一緒に行くからお前は絶対に1人で遠出すんなよ？……可愛いんだからさ。

春になったら、桜が見れる所行こうな？
あ、んで。夕陽を見て、三日月も一緒に眺めよう。
そんな綺麗な景色の中で、お前とたくさん色んな話をして、たくさん想い出作りたいよな？

俺さ、プロポーズも……やり直したいんだよ。
もっと高くて、良い指輪買って、お前が腹抱えて笑うくらいのベタなセリフ言ってやるからさ！

だから、さ。
……だから、…………。

……
…………なぁ？雪ゆき。
一緒にやりたい事とか、話したい事とか……。俺、いっぱいいっぱいあるんだよ。
思わず鼻血噴いちまうくらいの、お前の嬉しそうで幸せそうな表情かお、もっともっと見たいんだよ。

……なのに。
なぁ？何で……動いてくれねぇんだよ？


「……、……雪ゆき？」

地面に両膝を着いて、俺は血で真っ赤に染まった雪ゆきを抱き寄せて揺らした。

「雪ゆき……？……っ、雪ゆき？」

顔に付いている血を指で、手で拭ってやりながら、顔を見つめる。
けど、その目が開く事はない。口が開く事はない。

「っ……ゆ、……き。
……ゆ……ッ、…………っーー……」

嘘だろ？
信じない。
大丈夫だ。
今、雪ゆきは、また眠ってるだけだ。

ーー……そう、思うのに。
溢れ出す涙が止まらなくて、瞼をギュッと閉じれば雪ゆきの顔にポタポタッと滴った。
俺は、雪ゆきの全てを抱くように腕に包み込む。

「……っ、………ぁ……あ……っーー。
う、あぁぁぁあああああーーーーー……ッ！！！！！」

……
いつしか、雪が降っていた。
戦いは終わって結界は解けたのに、血塗れの雪ゆきを抱き締めて中庭で泣き叫ぶ俺には……誰も近付こうとはしなかった。

……
…………。