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第9章(2)雪side
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しおりを挟む「……お待たせ、紫夕」
けど。
オレは顔を上げて、他には一切目を向けないで、1番大切な人に向かって微笑みかけた。
「っ、……ゆ、き?」
砂埃が上がる中庭で、傷だらけで、ボロボロで、斬月を地面に突き刺して身体を支える紫夕。
間に合ったーー。
「もう大丈夫。後はオレがやるから……」
「……え?」
「紫夕がもう傷付かなくていいように、オレが全部引き受けるから……。そこで見てて、ね?」
オレの登場をまだ夢かのように驚いている紫夕に背を向けて、空を見上げて叫ぶ。きっと父さんは、今この光景を何処かで見ている筈だから……。
だから、聞こえるようにーー……!!
「父さんが見たかった戦いッ!オレと母さんが力を合わせて、三月さんと戦う姿ッ!望み通り見せてあげるよッ……!!
……、……けど、貴方に仕組まれたからじゃない!オレはオレの意志でッ……大切な人を護る為に戦うッ!!」
父さんが己の楽しみという欲望の為に作り上げたシナリオは二つ。
1つは、紫夕と三月さんの親子の対決。
そしてもう1つが……。オレが母さんの魔器を使って三月さんと戦うと言う、狂った愛が生んだ最低なシナリオだ。
ギシャアアアァァァーーー………ッ!!!!!
オレが叫んだ直後。
上がっていた砂埃が晴れて来て、母さんを呼んでいたその人が姿を現す。
オレには、聞こえる。
「サクラ、サクラ……」って、鳴き声の中に今もしっかりと響いて聞こえる。
巨大な鬼のようになってしまったけれど、目の前のこの人は今も母さんを想って捜してくれている。
「三月さん、貴方の魂を必ず母さんの元に送ります」
三月さんの顔を見上げてオレはそう言うと、雪桜を構えて大きく地面を蹴った。
……
…………。
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