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第9章(2)雪side
9-2-1
しおりを挟む「……。……、……ラ。
……サ………ラ、…………。
サ……ク…………ラ、…………サク、ラ」
ーー……っ。
…………え?……っ、……誰?……。
誰かが、オレを母さんと勘違いして呼んでる。
でも、まだ身体が動かせない。
耳は聞こえるけど、身体はまだ動かせない。
……
そしたら、懐かしい日の事を夢に見た。
幼い頃、よく母さんと眺めた夜空。母さんは三日月が大好きで、三日月が見える夜はいつも一緒に眺めていた。
「三日月を見ていると、大好きな人を思い出せるの」
そのひとが、とうさんーー?
そう尋ねるオレに、母さんは首を横に振って少し寂しそうに微笑った。
「三月さん、って言って……。
そうだなぁ、母さんの心を救ってくれた大切な人よ」
みづき、さんーー……?
……
…………そうだ、三月さん。
何で、忘れちゃってたんだろう。母さんを救ってくれた、大切な、大切な人の名前ーー……。
「ごめんね?母さん。今まで忘れてて」
今度は、真っ暗な闇の中にオレは母さんと居た。
オレがそう言うと、母さんは首を横に振って昔と同じ笑顔を見せてくれる。
「オレ、全部思い出したよ。紫夕がね、母さんの遺した日記を聞かせてくれたんだ。
あ、紫夕は……。オレにとっての、三月さん。大切な、大切な……オレの心を救ってくれた人だよ」
うん、知ってるわーー。
そう言うように、母さんは微笑んでいた。
「……そう、だよね。知ってる、よね?
だって母さんは、ずっとオレと一緒に戦ってくれてたもんね?」
オレは、思い出した。
母さんが、最期、どうなったのか思い出したんだ。
魔物化が始まって、オレの元から離れようとした母さん。
けど、オレはすぐに母さんが居なくなってしまった事に気付いて……。孤児院を飛び出して、追い駆けちゃったんだ。
そしたらーー……。
そこには、白鳥のような翼が生えた真っ白な龍が居て……、……。
その龍は、特殊な武器を持った兵隊さん達に囲まれてて……、……。
真っ白な身体は、徐々に真っ赤に染まっていって……。そのうちに、力尽きて地面に倒れ込んだ。
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