スノウ

☆リサーナ☆

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第8章(4)紫夕side

8-4-2

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……けれど。
そんな内容を読み進めていく内に、俺の中には一つの疑問が生まれた。

そもそも、ゆきのお袋さんは何で研究所に居たんだーー……?

ここまでの日記を読むと、ゆきのお袋さんは物心付いた時にはもう研究所に居て、監視され、隔離されて、ほとんど部屋から外には出た事がない。たちばなを始めとした研究員以外との接触もない。
そして時々出てくる、「検査」と言う言葉。
どう考えても、ゆきのお袋さんにも何らかの"秘密"がありそうだった。

俺がそう感じて、ほんの少し気を引き締めて日記のページを捲ると……。

【どうしよう?どうしたら、いいの?
三月みづきさんが亡くなった原因を、私は知ってしまった。
たちばなさんが誰かと話していたの。

「元々気に入らなかったが、アイツは私から大事なサクラを奪おうとした。
だから殺して、無残な姿にしてやった」って……。

私のせいだ。
私のせいで、三月みづきさんは殺されてしまったんだ。

それだけじゃ、ない。
私は、自分の秘密も知ってしまった。

「サクラは私が創り上げた最高の被検体だ。研究に研究を重ね、魔物と人間を掛け合わせて出来た究極の人型魔物。
誰にも渡さない。サクラは私の努力の結晶だ」

私は、人間じゃなかった。
たちばなさん達に創り出された、人型の魔物兵器。大切にしてくれたのは、貴重な実験の道具だから……。
そして、更に研究を重ねる為に私に自分の子供を……サクヤを生ませたんだ。

どうしよう、逃げなきゃ。
このままじゃ、サクヤまで実験の道具にされてしまう!】

その日付は、おそらくゆきが4歳位の頃。

「人型の、魔物兵器……?」

俺は思わず、ゆきを見た。
初めて会った時。不思議な色の瞳をしていたゆきを見て、俺は異国の血が入っているのだと思っていた。
成長するゆきを見て、特に最近一層美しくなる姿に、妖精か幻獣のようだと思った事があった。

それが、まさか本当にーー……?

心の中で問い掛けながらも、俺にはそれを疑うまでもなかった。

……そして。
そんなゆきを、不思議と恐ろしいとは思わなかった。
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