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第7章(3)紫夕side
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しおりを挟むしかし、よくよく考えてみれば、今の雪が本来の雪なのかも知れないとも思った。母親の死がなかったら、引き取られた先が普通の家だったら……。雪は元々、こんなに笑って話せる子だったのかも知れない。
そんな事を思いながら、ふと何気なく言った。
「ったく、雪の親父さんはきっと大変だったんだろうな?」
「?……何で?」
「だって、お前がこんなに可愛いなら、お袋さんも相当可愛かったんだろうな~って。その上、もしお前みたいな性格だったら、絶対に俺みたいに振り回されてそうじゃん」
何故か雪は母親似だと、俺は信じて疑わない。勝手に想像して、小さな頃の雪も思い浮かべて思わずニヤけてしまった。絶対に可愛かったんだろうな、って。
けど、そんな俺の目の前で、雪は考え込むようにして……。暫くして口を開いた。
「……父さん、知らない」
「!……え?」
「そう言えば、知らない。見た事、ない」
「っ、……、……」
「気付いたら、母さんと二人で色んな場所転々としてて……。父さんは、いなかった」
……っ。
こ、これは……俺、マズい事を言ったんじゃないかーー?
雪の言葉を聞いて、俺は一瞬口をつぐんだ。
今まで雪の心の傷を深くしないように、過去を必要以上に聞く事はしてこなかった。マリィにも「雪ちゃんから話すようになるまで聞いちゃダメよ!」って、言われてた。
それなのに、俺の一言でまた雪が傷付いてしまっていないかと思うと怖くなる。
「……紫夕?」
「!っ、……あ、え?」
「気にしてるの?」
「な、何がっ?」
雪に問い掛けられて、分かりやすい位に動揺してしまう俺。そんな俺に、雪はギュッと抱きつきながら言った。
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