スノウ

第６章（２）雪side

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今日は、久々に訓練所に行く。
ずっと紫夕しゆうの看病ばかりで病室に引き篭もってるオレを見て、風磨ふうまさん、トニーさん、茶々ちゃちゃさんが「一緒に身体を動かそう」って訓練に誘ってくれたんだ。
マリィにも「たまには運動も大切よ」って言われて、オレは参加する事にした。
ちなみに、杏華きょうかと海斗かいとは「隊長がいない間、その分私達がたくさんの人を救わなきゃね！」って、別部隊に参加して、今は任務に行っている。

魔器マギ……。雪桜ゆきざくらを握るのは、ベヒモス討伐の日以来。
オレはずっと病室の片隅に置いていた雪桜ゆきざくらを手に取り、腰に差すとベッドに寝たままの紫夕しゆうに近付いて手を握った。

少しだけ行ってくるね、紫夕しゆう。

そう心の中で呟くと、何だか今日は少しだけ、いつもより紫夕しゆうの手が暖かい気がした。
「頑張れよ」って、言われた気がした。

うん、頑張る。

オレは頷いて、ゆっくり手を放すと、静かに病室を後にした。

……
…………。

何だかんだで、紫夕しゆうの病室にギリギリまで居てしまったオレが廊下の時計を見ると、風磨ふうまさん達との約束まであと五分を切っていた。

急がなきゃーー。

医療施設から訓練施設に行くのは少しばかり距離があった。医療施設の廊下は走っちゃいけないから、なるべく早足で通り抜けて、オレは外に出た。

ここから訓練施設に行くなら、研究所の中庭を通った方が近いーー……。

そんな考えが頭を過ぎる。
でも、研究所の中庭。それは、嫌な思い出がある場所で、紫夕しゆうにも「もう近付くな！」と言われた場所。

……でも。
今日は雪桜ゆきざくらもあるし、大丈夫だ。

魔器マギさえあれば、自分は普通の人間よりも遥かに勝る身体能力を発揮する事が出来る。
だから大丈夫、と、迷った挙げ句オレは中庭の方に足を進めた。