スノウ

第４章（２）紫夕side

4-2-2

俺は冷静になって、もう一度チラッとテーブルに叩き付けた討伐部隊のメンバー表に目をやる。
俺の部隊には杏華きょうかと海斗かいとは残り、響夜きょうやが双剣使いならば戦闘バランスの崩れはさほど無い。
それに何より、幸い雪ゆきが入るのは風磨ふうまの部隊。別の部隊なら心配だが、風磨ふうまなら……信用出来る。

「……。
分かった、引き受ける」

心の中を整理して、俺はそう言った。

「ただし、今回限りの約束だ。この任務が終わったら、雪ゆきは今まで通り第1部隊に返してもらう。……それが条件だ」

この状況を、逆に利用してやろうと考えた。
今この場には、他の部隊の隊長、調査員や研究員達が居る。その大勢の前で約束させれば、橘たちばなだって立場上、簡単に破る訳にはいかなくなる。
そんな考えで言うと、意外にも橘たちばなはすんなりとそれを承諾した。

「ああ、勿論だとも！ありがとう、望月もちづき君」

「紫夕しゆうさん、ありがとうございます！よろしくお願いします！」

もう一度頭を下げる橘たちばな。そして、嬉しそうにお礼を言って、俺に手を差し出してくる響夜きょうや。そんな響夜きょうやと握手をした後、俺は風磨ふうまに声を掛ける。

「雪ゆきの事、よろしく頼むな」

「ああ。任せろ」

この任務だけーー。

そう思って、俺は風磨ふうまに雪ゆきを託した。


しかし、俺と風磨ふうまが話す様子をチラ見しながら、橘たちばなは背中を向けて呟いていた。

「ああ、"今回限り"だ。
何故なら、お前に次はないからな……」

そんな事には全く気付かず、会議は……終わった。

……
…………。