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第2章(4)紫夕side
2-4-2
しおりを挟む怒りで胸が震えて、全身まで震える。
最初の一撃がよっぽどの衝撃だったのか、橘は気絶しているらしく立ち上がらない。
でも、俺はもう自分ではこの怒りを止められなくて、倒れた橘の胸ぐらを掴んで引き寄せると、拳を高く振り上げた。
けど、その瞬間ーー。
「っ、し……ゆう!」
それ、は。
小さな声なのに、俺の心にしっかり届いた。
ピタリッ、と止まる俺の腕。
すると、ズボンの裾を弱々しくクンッと引かれて……。俺は、足元を見た。
目に映るのは、自分の喉元を苦しそうに押さえながらも、俺を必死で見上げてる雪。
その姿に怒りが鎮まって、一瞬で目が覚める。
「っ、雪……?
おいっ!雪っ、どうしたっ!?」
俺は橘から手を離すと、すぐさま屈んで雪の様子を見た。
浅い呼吸を何回も激しく繰り返して、苦しそうにしてる。
過呼吸、起こしてんのか……っ。
「っ、雪!おいっ、しっかりしろ!」
過呼吸の対処法は昔マリィから習った事があった。俺は雪を支えて背中を摩りながら辺りを見渡す。
ビニール袋を頭から被せ、二酸化炭素濃度の高い空気を吸わせて治すのが普通だ。
でも、この辺に使えそうな物は何もない。
仕方ねぇ、一か八か……!
「っ……雪、ごめんなっ」
俺は雪を抱き締めると、そっと口付けて何度もキスを繰り返した。
何も道具が見付からない時は、そうやって治せるともマリィに聞いていた。実際にやるのは初めてで、本当に効くのかは半信半疑だった。
でも、俺はとにかく必死だった。
口付ける前に思わず口から出た「ごめん」。
自然と口から出て、正直自分でも何に対してか分からなかった。謝りたい事があり過ぎて、分からなかった。
……
…………暫くすると。
雪の激しく肩で息をしていた身体の揺れが治まってきて、俺は唇を離して間近で見つめた。
呼吸は落ち着いてきていた。が、濡れた瞳で見つめられて、俺はもう一度雪に口付けてしまった。
ただ雪と、キスしたかった。
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