スノウ

☆リサーナ☆

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第2章(4)紫夕side

2-4-2

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怒りで胸が震えて、全身まで震える。
最初の一撃がよっぽどの衝撃だったのか、たちばなは気絶しているらしく立ち上がらない。
でも、俺はもう自分ではこの怒りを止められなくて、倒れたたちばなの胸ぐらを掴んで引き寄せると、拳を高く振り上げた。

けど、その瞬間ーー。

「っ、し……ゆう!」

それ、は。
小さな声なのに、俺の心にしっかり届いた。

ピタリッ、と止まる俺の腕。
すると、ズボンの裾を弱々しくクンッと引かれて……。俺は、足元を見た。

目に映るのは、自分の喉元を苦しそうに押さえながらも、俺を必死で見上げてるゆき
その姿に怒りが鎮まって、一瞬で目が覚める。

「っ、ゆき……?
おいっ!ゆきっ、どうしたっ!?」

俺はたちばなから手を離すと、すぐさま屈んでゆきの様子を見た。
浅い呼吸を何回も激しく繰り返して、苦しそうにしてる。

過呼吸、起こしてんのか……っ。

「っ、ゆき!おいっ、しっかりしろ!」

過呼吸の対処法は昔マリィから習った事があった。俺はゆきを支えて背中を摩りながら辺りを見渡す。
ビニール袋を頭から被せ、二酸化炭素濃度の高い空気を吸わせて治すのが普通だ。
でも、この辺に使えそうな物は何もない。

仕方ねぇ、一か八か……!

「っ……ゆき、ごめんなっ」

俺はゆきを抱き締めると、そっと口付けて何度もキスを繰り返した。
何も道具が見付からない時は、そうやって治せるともマリィに聞いていた。実際にやるのは初めてで、本当に効くのかは半信半疑だった。
でも、俺はとにかく必死だった。

口付ける前に思わず口から出た「ごめん」。
自然と口から出て、正直自分でも何に対してか分からなかった。謝りたい事があり過ぎて、分からなかった。

……
…………暫くすると。
ゆきの激しく肩で息をしていた身体の揺れがおさまってきて、俺は唇を離して間近で見つめた。
呼吸は落ち着いてきていた。が、濡れた瞳で見つめられて、俺はもう一度ゆきに口付けてしまった。

ただゆきと、キスしたかった。
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