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第2章(2)雪side
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***
帰りたいけど、帰りたくないーー。
そう思って、ずっとぐるぐる本部内を歩いてた。
人がいっぱい居る場所は嫌いだから避けていたら、ここは研究所の方向。紫夕に「近付くな!」って言われてたけど、いつの間にか来ちゃったみたいだ。
今日はいっぱい考えたから、少し頭が痛い。
……あ。
マリィに頼まれた仕事、まだ終わってなかった。
伝言を頼まれて、仕事を後回しにして出て来てしまった事をようやく思い出して……また、嫌になる。
「……。オレ、何も出来ない」
こんなんだから、紫夕はオレを1人に出来ないんだ。
いつも焦ったり、怒ったり、困ったり、悲しんだりするばっかりで……。ニコニコ出来ないんだ。
「……おや。
これはこれは、久し振りだね。真白君」
俯いて歩いてたら、誰かに声を掛けられて顔を上げた。
あ、紫夕が嫌いな人だ。
そこに立っていたのは、オレに魔器をくれた人。でも、紫夕が「嫌い」って言ってた研究者の人だと分かった。
名前は、確か橘さん。
「……こんにちは」
一応、目上の人には挨拶、って言われてたから軽く頭を下げて言った。
けど、「いいか、もうアイツには近付くな!」って、前に紫夕に言われていたから、オレはすぐにその場を立ち去ろうと思った。
でも、その時。橘さんが言った。
「美しく成長したものだ。
さすがはーー…………の、息子だな」
ーー……え?
すれ違う瞬間に耳に入ったその言葉に、オレは足を止める。
だってその名前は、オレの…………。
「母さんを、知ってるの?」
久々に聞いた大好きな人の名前に反応すると、それを見て橘さんは笑った。
「ああ、知ってるとも。
君は生き写しだからすぐに分かった。まさに、忘れ形見、だとね」
忘れ形見。
その言葉の意味はよく分からなかったけど、「母さんを知ってる」。その言葉にオレは興味が湧いて、紫夕の注意を、一瞬忘れた。
帰りたいけど、帰りたくないーー。
そう思って、ずっとぐるぐる本部内を歩いてた。
人がいっぱい居る場所は嫌いだから避けていたら、ここは研究所の方向。紫夕に「近付くな!」って言われてたけど、いつの間にか来ちゃったみたいだ。
今日はいっぱい考えたから、少し頭が痛い。
……あ。
マリィに頼まれた仕事、まだ終わってなかった。
伝言を頼まれて、仕事を後回しにして出て来てしまった事をようやく思い出して……また、嫌になる。
「……。オレ、何も出来ない」
こんなんだから、紫夕はオレを1人に出来ないんだ。
いつも焦ったり、怒ったり、困ったり、悲しんだりするばっかりで……。ニコニコ出来ないんだ。
「……おや。
これはこれは、久し振りだね。真白君」
俯いて歩いてたら、誰かに声を掛けられて顔を上げた。
あ、紫夕が嫌いな人だ。
そこに立っていたのは、オレに魔器をくれた人。でも、紫夕が「嫌い」って言ってた研究者の人だと分かった。
名前は、確か橘さん。
「……こんにちは」
一応、目上の人には挨拶、って言われてたから軽く頭を下げて言った。
けど、「いいか、もうアイツには近付くな!」って、前に紫夕に言われていたから、オレはすぐにその場を立ち去ろうと思った。
でも、その時。橘さんが言った。
「美しく成長したものだ。
さすがはーー…………の、息子だな」
ーー……え?
すれ違う瞬間に耳に入ったその言葉に、オレは足を止める。
だってその名前は、オレの…………。
「母さんを、知ってるの?」
久々に聞いた大好きな人の名前に反応すると、それを見て橘さんは笑った。
「ああ、知ってるとも。
君は生き写しだからすぐに分かった。まさに、忘れ形見、だとね」
忘れ形見。
その言葉の意味はよく分からなかったけど、「母さんを知ってる」。その言葉にオレは興味が湧いて、紫夕の注意を、一瞬忘れた。
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