スノウ

序章（２）紫夕side

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俺は今まで男とセックスそんな事をしたい、なんて1ミリも思った事はないが、同性をも魅了してしまう魅力を少年に感じたのは確かだった。

「……と。もうすぐ本部に着くわね」

一呼吸整えて、窓の外を見たマリィが言った。

「さっき手当てをしながら名前を聞いたんだけどね、頑なに言おうとしなかったの。
でも、本部に置くには名前登録が必要でしょ？どうする？紫夕しゆうちゃん」

名前を言わなかった。
その理由が、俺にも何となく分かる気がした。

これまでの自分が嫌だからーー。

これまでの自分の人生に絶望している少年。
ならば、そんなもの捨てさせてやりたいと思った。だから、俺は言った。

「……雪ゆき」

「！……え？」

「真白ましろ 雪ゆき。
これからはそう呼ぶ。今日からコイツは生まれ変わるんだ」

窓の外を舞い散る粉雪。
それを見て言う俺に、マリィが微笑った。

「真白ましろ 雪ゆき。
真っ白な雪、ね。綺麗な名前、この子にピッタリだわ！」

きっとマリィは少年の白髪の姿を見て、俺がそう名付けたと思っているだろう。

けど、本当は違う。

触れたらすぐに消えてしまいそうな、粉雪のように繊細な命ーー。

俺にはこの少年が、粉雪そのもののように思えたんだ。

でも、決して消したりしない。
春夏秋冬、どんな環境にも負けないように生きて、自ら見付けた場所で美しく輝き舞えるようにしてやりたいと、思った。

なぁ、雪ゆき。
お前は幸せだったかーー？

いつかそう問い掛けた俺に、お前が微笑って答えてくれる日を、夢見てたんだ。