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第3章(4)レベッカside
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しおりを挟むその言葉と態度に傷付き涙を流すレノアーノ様を見ても、一つも表情を変えず……。そんなツバサ様に、私の中にはふつふつと怒りの感情が込み上げてくる。
レノアーノ様のあの幸せそうなお姿は?
日々の努力や我慢は?
想いを募らせ、こうして自ら会いに来たお気持ちは……。全て、全て一方通行だったというのか?!
執事からただの一人のレノアーノ様の幸せを願う人間として、私が感情を爆発させようとした瞬間だった。
その場に耐え切れなくなったレノアーノ様が泣きながら駆け出す姿に、私はハッとして我に返ると跡を追わなければと様子を伺っていた物陰から踏み出す。
その時……。
「あいつの事を、よろしくお願いしますっ……」
「!!ッーー……」
その声に思わず視線を向けると、離れた場所から私に頭を下げるツバサ様の姿が……瞳に映った。
冷静になってその姿を見るとまだ彼が16歳の、幼い少年なのだという事に気付く。
微かに震えている身体が、下げたままの顔を上げられない理由を物語っている。
胸がズキンッと、痛んだ。
必死に必死に、ツバサ様は我慢していたのだ。
レノアーノ様が、自分に未練を残さないように……。
彼は私が居る事にとっくに気付いていて、ならば大丈夫だろう、とワザと冷たい言葉と態度でレノアーノ様に接した。全ては、レノアーノ様の為に……。
「お任せ下さい」
ツバサ様の想いに触れて、私は執事としての使命を思い出すとレノアーノ様を追った。
好き。愛してる。
そんな言葉がなくても、想いが伝わってくる事もあるのだと知った。
ツバサ様がレノアーノ様を想う気持ちは、言葉にされなくても確かにあの時存在したのだから……。
お邸に帰り、元の生活に戻ったレノアーノ様はそれからツバサ様の事は一切口にしなくなり、アッシュトゥーナ家のお嬢様として更に磨きをかけて行った。
中でも孤児院や災害の起きた被災地を自ら訪れてのボランティア活動は大きく評価され、レノアーノ様は世界中から"女神様"とも呼ばれるようになった。
……
…………。
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