片翼を君にあげる③

☆リサーナ☆

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第7章(1)ノゾミ&瞬空side

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暫くして……。

瞬空シュンクウ
私ね、実は今日……貴方と、最後の恋人としての時間を過ごすつもりでこのデートに来たの」

呟くようにそう言って、ノゾミは苦笑いした。
私は黙って、聞いていた。

「貴方が入院して、一緒に過ごした二週間。私は本当に嬉しくて幸せだった。
……でも同時に、"今この時"が最高の瞬間なんだ、って思ったの」

ノゾミが私から他の場所へゆっくりと視線を向ける。
その先に居たのは、幼い子供を連れた夫婦。仲睦まじい、家族だった。

「作り話では、よく「愛があれば、何でも乗り越えられる」って言うわよね?
けど私には、そんな風にかっこいい事は言えない。……言えない、って、気付いてしまったの」

ノゾミの瞳から流れる一筋の雫。
その涙の意味が、私には分かってしまった。
そして、美しい涙がまるで私の心に落ちたように、沁みた。

自然と、指輪を差し出していた私の手が引くと、ノゾミが口を開こうとした。

が、私がそれを遮る。

瞬空シュンクウ、ごめ……」
「ーーすまなかった」

「え?」と、ノゾミが驚く。
私は、言葉を続けた。

「謝るのは私だ。其方ではない。
私は、今の今まで分かっていなかった。其方に指輪を贈る、本当の意味を……」

分かったつもりでいた。
指輪を用意すれば、愛の形を用意すれば、ノゾミが喜んで笑顔で付いて来てくれると思っていた。

付いて来てくれるーー。

ノゾミの為に何かしたい、と思いながら、結局は己の為である愚かな考えしかなかったのだ。
彼女の涙で、ようやくそれに気付く事が出来た。

「私の為に、其方が全てを捨てる事はない。謝る事もない。
私も同じなのだ。其方の為に、自分の国や今ある立場を、捨てる事など出来ぬのだから……」

ーーそう。
やっと、気付いた。
私に彼女を想う本当の気持ちがあるのなら……。
彼女を本当に心から幸せにしたいのならば……。

『国も、今の立場も捨てる。
何もなくなるが、私と一緒に生きてほしい』

そう、互いに対等な立場で、指輪を贈らプロポーズしなくてはならなかったのだ。
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