88 / 144
第5章(2)ツバサside
2-2
しおりを挟む「でも、やっと、分かったんです。
大切な人の為に犠牲になるんじゃなくて、大切な人が笑顔になってくれる方法を、選ぶべきなんだ、って」
どうして人は、周りの気持ちには鈍感なのだろう?
自分だって、そんな事されたら嫌なのに……。なかなか気付く事が出来ない。
でも、俺は気付けた。
これ以上、大切な人の悲しい表情を見ない為に、自分がどうすればいいのか。だから……。
「だから、俺はこの盃は飲めません。
甘っちょろいと言われるのも、ルール違反だと言われるのも百も承知です。
けどっ……どうか、お願いしますッ!!」
カッコ悪くてもいいんだ。
だって、俺は俺なんだから……。
父さんのように天才じゃない。
勝負運が強い訳でも、実力が備わっている訳じゃない。
だから、諦めず、抗う事しか出来ないーー。
俺は椅子から立ち上がると、床に両膝と両手を着いて……頭を下げた。
「お願いします!何か別の勝負方法で、再戦をさせて下さい……!!」
毒を飲む訳にはいかない。
大切な人達を悲しませる訳にはいかない。
でも、この勝負に、負ける訳にもいかない。
「っ、お願いします!!お願いします!!お願いしますッ……!!」
俺は、何度も何度もお願いし続けた。
これが、今の自分に出来る精一杯の行動。
今を生きて、明日に繋げるんだ。
大切な人の笑顔を、これからも見る為に。
大切な人と、これからも未来を生きていく為にーー……。
すると、お願いし続ける俺の頭上から、再びミヅクさんの「あははははははっ……!!」と言う笑い声が聞こえた。
やっぱり、ダメなのかーー?
そう、思いかける。
しかし、それだけではない。
パンッ!パンッ!と、手を叩く音も聞こえて……俺はゆっくりと、顔を上げた。
その視線の先にあったのは……。
さっきの見下していた笑顔ではなく、満足そうな暖かい笑顔を浮かべたミヅクさんだった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
姉らぶるっ!!
藍染惣右介兵衛
青春
俺には二人の容姿端麗な姉がいる。
自慢そうに聞こえただろうか?
それは少しばかり誤解だ。
この二人の姉、どちらも重大な欠陥があるのだ……
次女の青山花穂は高校二年で生徒会長。
外見上はすべて完璧に見える花穂姉ちゃん……
「花穂姉ちゃん! 下着でウロウロするのやめろよなっ!」
「んじゃ、裸ならいいってことねっ!」
▼物語概要
【恋愛感情欠落、解離性健忘というトラウマを抱えながら、姉やヒロインに囲まれて成長していく話です】
47万字以上の大長編になります。(2020年11月現在)
【※不健全ラブコメの注意事項】
この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。
それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。
全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。
また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。
【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】
【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】
【2017年4月、本幕が完結しました】
序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。
【2018年1月、真幕を開始しました】
ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる