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第4章(3)ツバサside
3-3
しおりを挟む俺も続いて、ミヅクさんが座った反対側に座り、対面で向き合う。
すると、ミヅクさんが今回の下剋上の内容を口にした。
「さて、ツバたんも知っている通りボクは「毒使いのミヅク」。
だから難しく考えず、その通りに、1番得意な毒を使って下剋上をしようと思う」
毒を使っての下剋上ーー。
ミヅクさんが相手である以上、その予想は全く考えていなかった訳ではなかった。
しかし、夢の配達人の掟の一つである「人を殺めてはならない」と言う約束がある以上、それは難しいのではないか?と……。最高責任者であるシュウさんが、認めないのでは?と思っていた。
だから、俺の考えは甘くなっていた。
きっと毒で勝負、と言ってもさほど危険性はない筈だーー……。
そんな事を考えていた最中、ミヅクさんがパチンッと指を鳴らすと、部屋の入り口が開いて盃が5つ乗ったお盆がこちらへと運ばれてくる。
けど俺はその道具よりも、運んで来た人物の方が気になって思わずその名を呼んでしまった。
「っ、……ジャナフ」
そう、まるでミヅクさんの助手のように下剋上に使う道具をテーブルに置き、準備を始めるのはジャナフ。クリスマスの朝、俺が寮から出掛ける前に顔を合わせたきりだった親友だった。
ジャナフは、俺の呟くような呼び掛けにも視線にも応えない。黙々と、ただミヅクさんと俺の間にあるテーブルの上に5つの盃を並べると、それに八分目位まで透明な水を注ぎ入れた。
その様子を目で追っていると、ミヅクさんが口を開く。
「勝負は簡単。
この盃の一つにこの毒薬を入れるから、それを飲んだ方が負けだよ?」
「!……っ」
その言葉にハッとして再びミヅクさんに視線を向けると、ミヅクさんは小さなスポイトのような小瓶を手に持って俺に首を傾げて微笑んだ。
ミヅクさんは、本気だーー……。
その笑顔を見た瞬間。俺はこの後に及んで、自分の気持ちがすっかり緩んでしまっていた事に気付く。
危険性がない?
何を、バカな事を考えていたのだろう?
ここは、真剣に、勝負する場所だと言うのに……、……。
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