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第19章 (1)アカリside
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しおりを挟む「はい。アンケートにご協力頂けますと、本日この商店街のお買い物でご利用頂ける10%割引き券をプレゼント致します!」
「!……割引き券?!」
元貧乏町娘の私は思わず心の中で”欲しい!”と思って、それが内心には止まらず、表情に出して目を輝かせてしまった。
「くくっ……。
アカリ、めっちゃ顔に出てるから……っ」
「!っ~~……」
隣に居たヴァロンは私を見て、片手でお腹を押さえて俯きながら笑いを堪えている。
は、恥ずかしい~っ!!
と、思いつつ。
やっぱり安いに越したことはない、とペンの置いてある場所に行きアンケートを書こうとすると……。
「あ、旦那様ですか?
ご夫婦でご協力頂けましたら20%割引き券になりますが、ご一緒にいかがですか?」
「!……20%ッ?!」
背後から聞こえてきたその言葉に、私は反応してバッと素早く振り返った。
……。
私の目に映るのは……。
私の方をじっと見ている、ヴァロンとクマさん。
っ~~~~。
は、は……恥ずかしい~~っ。
思わず20%割引きの言葉に反応してしまった自分が、すごく恥ずかしくて真っ赤になる。
きっと、ヴァロンは呆れてると思った。
毎月貰う生活費も、町娘だった頃の私からは考えられないくらいに高額だし。いつも、余らせて驚かれてしまう。
でも、ヴァロンにとったら妥当な金額で……。
怖くて、夫婦なのにまだ年収すらも聞けない。
貧乏性で、割引き券に目を輝かせて……。
夢の配達人、白金バッジの妻として自分は恥ずかしい存在ではないかと不安になって俯いた。
もう、止めようとペンを戻そうとした時。
「やります!
僕も書くんで、20%割引き券下さいね!」
大好きな声を弾ませてそう言ったかと思うと、アンケート用紙を手にしたヴァロンが私の隣に来てペンを取った。
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