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第17章 (3)シュウside

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〈回想〉
【アラン邸/アランの部屋】

「……では。これで失礼致します。
レナ、レイ、帰りましょう」

依頼完了書を作成し、全てが終わってレナ達とその場を後にしようとした時の事。


「随分と、愛されてるんだね。ヴァロンは」

私達の背後に向かって、アラン様は鼻で笑った様に声をかけてくる。
気にせずに部屋を出ようとドアノブに手を伸ばすと……。


「ねぇ、君達の大好きなヴァロンの過去。……知りたくない?」

更に続いたアラン様の言葉が、思わず私の手を止めた。

”ヴァロンの過去”。
そのネタで強請ってきた人間は、今までにも数え切れない程いた。
普段ならハッタリや嫌がらせだと、たいして気に止めない事だが……。相手がこのアラン様だからか、なんだか意味深に聞こえる。

立ち止まったまま、動けずにいる私。


「娼婦だった母親に捨てられた。
君達が知ってるヴァロンの過去って、せいぜいその辺りまで……。でしょ?」

とっさに”いつの事を言っている?”と私の脳裏に浮かんだ気持ちを詠むように、アラン様が言う。


「私が言ってるのは、ヴァロンのそれ以前……。夢の配達人の隠れ家に引き取られるまで、何処でどう過ごしてたか……知りたくない?」

「!……」

それは、私やマスターでさえ知らない事。
ヴァロンが母親に闇市場で売られる以前の事は、どれだけ調査員が調べても分からなかった事だった。

ヴァロン自身の記憶も欠けており、昔は治療の為に通院を勧めていたのだが効果は得られず……。その内に彼の精神状態の安定を第一に考えて、無理に過去を呼び起こすのは止めようと判断した。


それを……。
そのヴァロンの過去を、この男は本当に知っている?

今までの強請りとは違う核心を突いた言葉が気になり、私が振り返り視線を合わせると……。アラン様はニッと笑い、椅子から立ち上がってゆっくり歩み寄ってきた。
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