114 / 151
第17章 (2)ヴァロンside
2-4
しおりを挟む「……わり、シュウ。
その依頼は、受けらんねぇよ」
シュウが俺にこの依頼を持ってきた、って事は……。間違いなく、指名依頼。
じゃなきゃ、誰よりも俺を分かってるシュウがこの依頼を勧めてくる筈がなかった。
きっと今後の俺の成績にとって有利な依頼なのだろう、と思う。
……でも。
アカリとだって、まだ数回しかしてやれてないデート。なのに、他の女とするなんて……。
「大丈夫ですよ。
今回のこの依頼は、アカリさんに説明済みですから」
「!……え?」
明らかに困った表情を浮かべて躊躇してしまっていた俺に、シュウが言った。
「昨日、私からお話しておきました。
驚いていましたが、依頼人の名前を言ったらすんなり了解してくれましたよ」
「?……アカリが、了解した?」
シュウがそう言うのなら、間違いなく彼女は許可したんだと思う。
けど、アカリがOKする依頼人?
「ま、考えるより依頼人に会って下さい。
絶対にヴァロンも喜ぶ筈ですよ」
「俺が喜ぶ、依頼人?」
半信半疑な俺を促す様に、シュウが少し先に進んだ部屋の扉を開けて手招きする。
導かれる様に、ゆっくり俺が部屋に足を踏み入れると「あ!」と言う可愛い声を上げて、依頼人らしき女の子がソファーから立ち上がった。
その姿に、目を疑う。
俺の目に映ったのは、黒い長髪を左右に分けて三つ編みした……女の子。
「……。ユイ?」
一度会っただけだが、忘れる筈ないその姿。
リディアが遺してくれた、俺のもう一人の娘。
「驚きましたか?実はユイちゃん……」
「ユイッ……!」
驚きは、あっという間に喜びに変わってた。
胸が高鳴って、シュウの言葉を遮って名前を呼ぶと……。俺は駆け寄り、小さい子を高い高いするみたいにユイの両脇に手を入れて持ち上げていた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる