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第17章 (1)アカリside
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しおりを挟む「ううん。たまには、ヴァロンも普通の人間なんだな~って思わせてくれないとね?」
「ふっ、なんだそれ。
……俺は、普通の人間だよ。特別なんかじゃない」
彼はそう言うと私の頬に口付けて、ギュッと抱き締めてくれる。
「少なくともアカリの前では、俺で居たい。
ただの一人の男なんだって、思いたい……」
その言葉と、私の頭に甘える様に頬をすり寄せてくれるヴァロンが可愛くて、愛おしくて……。手を伸ばしてそっと頭を撫でてあげると、彼が嬉しそうに微笑った。
「あ、でもさ!猫の絵は少し上手くなったんだぜ?」
「えぇっ?……本当に?」
「あ、信じてねぇな?
待ってな、今描いてやるから」
ヴァロンの発言に私が半信半疑な表情をすると、彼は机の上にあった紙とペンを持って一生懸命に猫の絵を描き始める。
「ほらっ!前よりは上手くなっただろ?」
絵を描く無邪気な横顔と、自信満々に描き上げた絵を見せてくるその姿は、まるで大きな息子みたい。
きっと……。
ずっと褒めてほしかったんだと、思った。
「ホントだ。前より猫に見える!」
「だろっ?アカリもなんか描いてよ?」
上機嫌のヴァロンは私にもペンを渡してきて、この夜は二人でお絵描きをした。
とても幼稚な、大人の夫婦が過ごす時間じゃないかも知れないけど……。私達は幸せだった。
きっとこんな風に……。私達はお互い幼い頃に、”家族”と過ごしたかったんだと思う。
一緒に遊んで、時には褒めてもらって、楽しい時間を共有して、笑い合いたかった。
幼い時に憧れた家族の形を、私とヴァロンはようやく手に入れられたんだね。
……
…………。
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