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第16章 (3)ヴァロンside

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【厨房】

ヒナタをローザ殿達に預けて、俺とアカリは二人で料理を作る事にした。
俺が材料の下拵えをしていると、アカリが手を止めてじっと見つめてくる。


「?……どした?」

「あ、ううん!
すごいなぁ、って思って」

俺のする事する事をまじまじと見ながら、何やら小さいノートに書き込んでいる。
勉強熱心というか、料理好きというか……。
その真面目な様子に思わず笑ってしまう。


「別に、俺はプロじゃねぇし。
アカリの方が料理は上手いんだからメモらなくて良くね?」

「……そ、そんな事ないもん。
た、玉子焼き……ヴァロンの方が美味しかった」

むぅ……っと、拗ねた様に呟きながら彼女は再び包丁を手に野菜を切り始めた。
分かりやすくて、素直で、本当に可愛い。


「……アカリ。
これ、ちょっと味見してみて?」

拗ねている機嫌を直したくて、俺はスパゲティーのソース用に味付けして煮たトマトをスプーンですくうと、彼女の口元に差し出した。


「えっ?あ、うん。
!っ……何コレ!すごく美味しい!」

条件反射でぱくっとソースを口にしたアカリは、驚いた直後に満面の笑みをこぼす。


……うん。
やっぱり、彼女には笑顔が一番似合う。

可愛くて、可愛くて仕方ない。


「……俺にも、味見させて?」

「えっ?……ッ」

俺は壁際に立っていたアカリを追いやると、唇を奪っていた。
口内に舌を滑り込ませてじっくり味わい、唇を舐めて間近で見つめる。


「……本当だ。美味いね」

「っ~~……ヴァ、ヴァロンのエッチ」

俺の意地悪な行動に、壁に背中をくっ付けた彼女が、顔を真っ赤にしてまた拗ねてしまう。


「……そんな可愛い顔、絶対他の男の前ですんなよ?」

「っ……ん、ッ……ン」

アカリの姿に堪らなくなって、俺は再び口付けると強引に舌を絡め取りながら、自分の身体を密着させて自由を奪った。

昨夜もあんなに抱いたのに、足りない。
今日は彼女を喜ばせる為に努めようと思ってたのに……。


「……っ、……わりッ」

そのまま身体を弄ろうとした手を何とか思い止まらせて、俺はアカリの両肩を持つとグイッと離して俯いた。
彼女を前にすると、本当に歯止めが効かなくなる。


「い、嫌な時は……殴っていいから……。
殴ってでも、噛み付いてでも抵抗してくれ……。じゃねぇと、俺……抑えらんねぇから」

手で口元を押さえながら、フイッと背を向けて調理に戻ろうとすると……。
アカリが俺の服の袖を引いて止めた。
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