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第16章 (1)ヴァロンside
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しおりを挟む「……ヒナタだけ、ずるい。
わ、私にはないの?」
「!っ……」
その拗ねたような表情に、ドキッとして俺は慌てて起き上がるとアカリを見つめる。
「あ、いや……。
アカリは、ほらっ!ぬいぐるみなんてもういらない……だろっ?」
予想外の反応と言葉。
本当は最初作り始めた時はアカリにあげるつもりだったのだが、年齢的にもうぬいぐるみなんて喜ばないのではないだろうか?と思い、つい欲しいか聞く前にヒナタにあげてしまった。
でも、アカリの表情を見て焦って後悔した。
「欲しいもんっ。
ヴァロンの手作りなら、欲しい……っ」
自分のスカートをギュッと握って、少し潤んだ瞳で訴えられて、その仕草に堪らなくなる。
さっき久し振りに再会して、慣れたようにヒナタの世話を焼き、色々話してくれる彼女に、もう”母親”なんだと感じた。
すっかり大人の女性なのだと……。
ヒナタという子供の存在で、アカリはこの半年間で自分より遥かに”親”になり、遠くなってしまった気がしていた。
仕事を選んだのも、離れたのも自分なのに、何だか寂しくて……。二人の関係が羨ましくて……。
早く家族になろうと、アカリと同じ様にヒナタとの距離を縮めようと必死だった。
……けど、俺は馬鹿だ。
寂しかったのは、俺だけじゃない。
俺はアカリの腕を掴んで引き寄せるとチュッと軽くキスして、そのまま抱き締めた。
「わりぃ。また、作るから。
アカリの事想いながら、あの猫より可愛いの作るから……。許してくれよ、な?」
何も変わっていない、愛おしい人。
いや、変わったとするなら……。
以前よりももっともっと大切が溢れて、掛け替えのない存在。
「うんっ。約束、だよ?」
微笑み合って、指切りをして……。
子供の前なのに、俺達は何度も口付けを交わしていた。
……
…………。
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