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第16章 (1)ヴァロンside

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【アルバート別荘/アカリの部屋】

「っ……」

アカリ用のベッドの上で仰向けに寝かされていたヒナタが、一生懸命小さな身体をひねって寝返りを打った。
じっと目線を合わせる様にベッドの脇に屈んで見ていた俺と目が合って、ヒナタが微笑んだ瞬間。本当に心臓を射抜かれたと錯覚する程の衝撃を覚える。


っ……やべぇ!やべぇだろッ!
何だ?!この可愛い生き物はっ……!!

アカリにそっくりな真っ黒な瞳に見つめられて固まっている俺に、ヒナタはほふく前進に近いハイハイで寄って来ようとするが……。
布団の上が滑るのか上手くいかず、なかなか前に進めなくて「ふぇ~ん!」とくずり始めた。


「!……ヒ、ヒナタ?
えっ、……あ、そ……そうだ!」

どうしてやったら良いのか分からずオロオロした俺は、ある事を思い出して自分の荷物を漁ると、その中から猫のぬいぐるみを取り出した。


「ほ、ほら!
ヒナタ~猫さんだぞ?」

ベッドに上がると、自分もヒナタの近くでうつ伏せになり、目の前で猫のぬいぐるみを動かしてみる。

すると……。
猫のぬいぐるみを見てヒナタは泣き止むと、ゆっくり手を伸ばして、ぎゅっと握って自分に引き寄せた。
顔の部分を掴んでじっと見つめた後、ぱくっと耳の部分に食い付きながら嬉しそうに微笑んでいる。ホッと一安心。


「っ……へへっ、気に入ったか?」

「!……可愛い。
そのぬいぐるみ、どうしたの?」

俺がヒナタの反応を見て満足気にしていると、お風呂の準備をしていたアカリが傍に来て言った。


「ん?ああ、作ったんだ~」

「えっ?ヴァロンの、手作りっ?」

俺の何気無い返答に、アカリは驚いたような声を上げると、自分もベッドに座りぬいぐるみで遊ぶヒナタを見つめる。

そして……。


「……ずるい」

「?……へ?」

ボソッと聞こえた声に俺がアカリを見ると……。
彼女は少し伏し目がちで、唇をキュッと結んでいた。
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