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第15章 (2)スズカside

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「……さ、早く帰ってあげて下さい」

「うん、ありがとう」

彼は私から荷物を受け取ると、背を向けて扉の方に歩いて行く。
遠ざかって行く背中。

……これで、最後。
今日で、最後のお見送り。


もう二度と、ここへ帰ってくる事はない。


「っ……マオ様ッ!!」

思わず名前を呼んでしまった私に、彼は背を向けたまま立ち止まった。


「楽しい時間を、ありがとうございました!
どうか、お幸せにっ……!!」

「……」

私のその最後の叫びには、彼はもう何も答えずに……。再び歩み始めて、去っていった。

もう、振り返らない。
きっと彼の……最後の優しさ、だった。

……。


「……参ったなぁ。
フラれて、もっと好きになっちゃう……なんてっ」

初恋の想い出の詰まった静かな部屋で、私は泣いた。
でも、悲しい筈なのに溢れ出る涙はとても温かくて……。素敵な恋だったと……。
恋をして良かったと、心から思えた。

……
…………。
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