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第15章 (2)スズカside
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しおりを挟む視線を泳がせながら、口元に手を当てて……。
きっと愛しい人を思い浮かべていたであろう彼が、ゆっくり答えてくれる。
「夢を……。
俺の夢を叶えられる、唯一の人……です」
彼のその言葉と、そう言った時の表情から……。
全く入り込める隙間がないくらいに”敵わない”と、悟った。
「……羨ましいです。
そんな風に想われて、その方は幸せですね」
心の底からそう感じて微笑む私に、すっかり”マオ様”から素に戻ってしまった彼が自然に惚気る。
「いや。幸せに、してもらってるのは……。
いつも俺の方、だから……っ」
「まあ!ふふっ」
その幸せそうな彼の姿に、ヤキモチを妬く感情も、彼の本性を怪しむ気持ちも起こらなかった。
「……最後に、お手伝いさせて下さい」
私はお部屋にある彼の荷物を一緒にまとめて、帰り支度を手伝った。
……
…………。
「道中、気を付けてお帰り下さい」
荷物がまとまり、別れの時。
すっかり片付いた部屋の中で頭を下げると、大きな手が私の前に差し出された。
「ありがとう。
君が用意してくれた空間は、いつもとても居心地が良かったです」
そう言って、彼は微笑んでくれた。
初めて見る彼の本当の笑顔に、視野が滲みそうになるのを……。私は必死で堪えて微笑み返す。
「勿体無いお言葉です、マオ様」
そっと差し出された手を取ると、その温もりが心に沁みて離れ難くなる。
でも、それと同時に……。
こんなに愛おしい人を自分の元から長期の仕事に送り出した女性を、素敵だと思った。
きっと断腸の思いだったに違いない。
私がその人の立場だったら……。
そんな事、出来ないかも知れない……。
私は手を放すと、机の上に置いてある荷物を持ち彼に差し出した。
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